国民負担率が増えるほど婚姻数も出生数も下がる
直近では企業の賃上げのニュースも話題になっていますが、賃金があがればいいという問題ではありません。もちろん賃金があがることは喜ばしいことですが、「給料があがった以上に国民負担で引かれる金額が増えて手取りが減っている」という状況こそが問題なのです。
少なくともここ20年スパンで見れば、国民負担率が増えれば増えるほど婚姻数も出生数も下がり続けるという完全に強い負の相関があります。私はこれを「国民負担率増による少子化のワニの口」と呼んでいます。
手に入れてもそれ以上に持っていかれる。まさに、児童手当など給付を拡充するといいながら、子育て支援金などの新たな負担増を課す政府の少子化対策と一緒です。
若者が若者のうちに結婚できなくなっている深刻さ
働いて額面の給料をあげても、それ以上に持っていかれて、手もとに残るお金がそれ以前より少なくなってしまう。そんなことをされれば、誰もが学習性無力感を植え付けられます。頑張っても意味がない、頑張れば頑張るほど巻き上げられると思い知らされるからです。無力感に苛まれれば、人間は行動をしなくなります。
抑制される行動の最たるものが、結婚や家族を持つことなどの行動です。今や結婚や子育ては、コストやリスクが伴う上に、ある程度の経済的余裕がなければ手出しのできない領域になっています。
事実、少子化によって全体の児童のいる世帯数は激減していますが、こと世帯年収900万円以上の世帯に限れば、2000年と比較しても、児童のいる世帯はまったく減っていません。減っているのはかつて子育て世帯のボリューム層である所得中間層が減っているからです。これは、つまりは、若者が若者のうちに結婚できなくなっていることによります。
内閣府が実施している国民生活に関する世論調査から、長期間の20代の若者男女の「将来の経済的不安(今後の収入や資産の見通しについて不安である)」の推移を追えば、いかにこの期間、継続して経済的不安ばかりを募らせてきたかがわかります。