閉店数はラーメン店や自動車整備業者のほうが多い

1990年代初頭にバブル経済が崩壊し、各業界の勢いが急速に下降する中、ゲームセンター業界は市場を伸ばし、新聞などで「不況に強い」とさえ報じられてきた。パンデミックの際に、ゲームセンター業界は売り上げを落としているが、翌年にはもう売り上げを伸ばしている(図表2)。

他業種と比較すると、ゲームセンターだけが苦境に立たされていると印象付けてしまうような記事は、偏りがあることがわかる。帝国データバンクの各種データを参照すると、2020年における倒産・休廃業数は、ゲームセンターが13件なのに対し、飲食店は715件(ラーメン店94件)、自動車整備事業者418件である(注)

(注)帝国データバンクは母数を示していないことに留意する必要がある。誤解を避けるためにあえて記載するが、筆者は同社のデータは面白いと評価しているからこそ参照していることを強調しておきたい。ネット上で広まっている記事の中には、あまりにもひどく、批判材料にもならないものが散見される。

上記のように一部では倒産・休廃業したゲームセンターが2年連続で増加したことを喧伝するが、そもそも警察庁の調査では、風営法第5号営業として認められたゲームセンターに限ってみても2022年(12軒増)、23年(21軒増)と2年連続店舗数が増加している。

業界団体の報告書でも、現時点で確認できる数値を見ると、2020年に9998軒と前年の1万2212軒から減少しているものの、2021年には1万61店舗とわずかに回復を見せている。同様に、ゲームセンターの売上高も2021年に上昇に転じている。

「ゲーセンはオワコン」は分析としては薄っぺらい

ゲームセンターは旬を過ぎた業態であり、それゆえに閉店・倒産が続くとこれまで幾度も語られてきた。その典型は、家庭用テレビゲームが登場したから、わざわざゲームセンターに行かなくとも遊ぶことができるというものだった。

新しいメディアが登場したから、古いメディアが淘汰されたというのは、説明としてはわかりやすいが、事態はそう単純ではない。たとえば、家庭用テレビゲームなどを含むゲーム産業の国内市場規模を見てみると、現在、そのトップはスマホゲームに譲っているものの、ゲームセンターは圧倒的なシェアを誇ってきた。この辺りは、以前、別のところに書いたので詳細を割愛するが、一言でいうならば店舗数の減少はほとんど小規模店舗であり、大型店舗は数を伸ばしてきたということだ。