ゲーセンは「環境」に左右される商売

ゲームセンターは、そのときどきの政治、経済の動きに連動して形を変えてきた。店舗数の減少は、端的に言って商店街の衰退と商業形態の変化に連動しており、ゲームセンター業界やオペレーターの創意工夫や努力は重要であるものの、それ以上に環境に左右されることを見落としてはならない。

大きな商店街を有する都内某所のゲームセンターで働く松原康太さん(31歳)は、ゲームセンターを「大声で遊んだりして、賑わう場所」だという。しかし、コロナ禍において声を出すことも憚られ、多少の咳でも「喘息気味で」と周囲に気遣う状況は、本来のゲームセンターの魅力を損なわせた。

ウイルスの飛沫を防ぐため、客にマスクの着用を呼びかけ、持参していない人にはマスクを配布、筐体(ゲーム機)の間をパーティションで区切り、消毒作業を続けたものの、店だけでなく商店街から客足は遠のいていった。

電子マネーは小規模店舗の活路になり得る

現在、松原さんの働く店舗では、平日1時間4000円のフリープレイ(筐体の時間貸し)や音楽ゲームの配信台サービス(注)を行うなどして、少しずつ客足を取り戻しつつある。とりわけ、鉄道のガード下に独自のコンセプトで店を集め、客の流れが大きく変化したことは明るい材料だった。

(注)配信台とは、インターネットで同を流すためのカメラやパソコンなどの機材を取り付けた筐体を指す。

寂れ気味だったストリートに活気が戻り、ゲームセンターも賑わうようになった。経営も上向きに転じているという。それでも、パンデミック宣言前のレベルまで回復しているわけではない。リモートワークの増加によってか、会社員の姿がかつてほど見られなくなったと感じている。

松原さんの働く店舗は、麻雀、格闘、音楽ゲームといったビデオゲームを中心とした昔ながらの小規模店舗である。プライズゲームもメダルゲームもプリクラもない。ワンプレイ100円では利益率が低いままだが、電子マネーを導入することで1回120~130円に設定することが可能となった。

コナミの音楽ゲームの場合、ワンコイン(100円)を投入した場合では3曲だが、電子マネーでは4曲遊べるなど幅を持たせることで現金のみの客にも対応する。大型のチェーン店ではすでに10年近く前から導入が進む電子マネーだが、小規模店舗にとっても活路になるのではないかと松原さんは考える。

ゲームセンターで遊ぶ2人の男性
写真=iStock.com/aluxum
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