予約客1人当たりの平均オプション料金収入は、ライアンエアーで22.80ユーロ(約3660円)、イージージェットで20.22ポンド(約3770円)だ。いずれも増加傾向にある。イージージェットの場合、総収入に占めるオプション料金の割合は、2017年の5分の1から、昨年にはほぼ3分の1を占めるまでに増加した。

一方、サウスウエスト航空の創業者であるハーバート・ケレハー氏は、異なるアプローチを採用した。低コスト・高効率の航空会社を目指し、あえて複雑なオプション料金を設定しなかった。興味深いことにオープンシート方式は、サウスウエスト自身にとっても有利に働いた。

自由席方式で「見えないコスト」を削減

フォーブス誌はケレハー氏の発言をもとに、「自由席制度は、乗客に選択の自由を与えると同時に、スムーズな搭乗プロセスを実現する重要な要素だ」と述べている。キーワードは、「スムーズな搭乗プロセス」だ。

あらかじめ番号を割り振られた乗客たちは、整然と列になって搭乗ゲートを通過し、機内では目当ての席へと我先に直行する。航空会社が乗客を一切急かさずとも、乗客のあいだに自発的な競争原理が働く。

結果、搭乗時間は自然と短縮される。機体の運航効率が向上することから、限られた機材で1日により多くの便を飛ばすことができる。同時に、空港運営会社から駐機スポットの占有時間に応じて請求される駐機料金も、自ずと低減する。

これにより、コスト削減や定時運航率の向上が実現し、チケットを低価格で売りながらも競争力を維持することができた。

「富裕層以外にも空の旅を」共同創立者のこだわり

オープンシート方式は、共同創立者であり元CEOのハーバート・ケレハー氏によって導入された。CNNは、サウスウエストの創業当時、「格安運賃を提供することで航空業界に変革をもたらし、アメリカの富裕層以外にも空の旅を開放することに貢献した」と意義を強調する。

創業者であるハーバート・ケレハー氏(写真=SouthwestArchive/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

米フォーブス誌は、ケレハー氏が「現代で最も愛された指導者の一人」であると称える。

「人と接するとき、階級や民族、肩書きで区別しなかった」というケレハー氏は、人間が大好きだった。ある従業員は、1年前に1度話したきりだが、自分の名前を完璧に覚えていたと語る。

また、あるとき、ケレハー氏が他社のCEOとエレベーターに乗った際、そのCEOは偶然乗り合わせた人物が自社の従業員であることに気づかなかった。これをからかうのが、ケレハー氏のお気に入りのジョークだったという。CEOなら従業員の顔くらいはみな覚えて当然、というわけだ。

ユーモア好きな人柄で人を惹きつける彼は、アメリカの空の旅を貧富の差を超えてあらゆる人に開放しようと、日夜業務にいそしんだ。