サウスウエストは、特に長距離便において、指定席の方が好まれる傾向が強いと説明している。さらに、米航空専門サイトのシンプル・フライングは、24時間前ジャストをねらうチェックイン手続きにプレッシャーを感じる顧客も多かったと解説している。オープンシートの廃止で、こうしたストレスは確かに緩和されるだろう。
 

だが、会社の利益を優先した措置である、との指摘もある。フォーブス誌は、「ウォール街最恐の物言う株主」と言われるポール・シンガー氏が所有するエリオット・インベストメント・マネジメント社(EIM)から、サウスウエスト航空が圧力を受けていると指摘する。

サウスウエスト航空ボーイング737-MAX8
写真=iStock.com/John M. Chase
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「物言う株主」への警戒感

サウスウエストのボブ・ジョーダンCEOは声明で、「当社独自のオープン座席モデルは、サウスウエスト航空の創業以来の一部でしたが、当社の詳細かつ広範な調査により、これが顧客、従業員、株主にとって、適切な選択であり時期も適切であることは、明らかです」と述べ、顧客利益の尊重を強調した。

フォーブス誌は、「この最後の言葉が鍵だ」と指摘する。「株主」の影響を大きく受けたのではないか、との読みだ。

同誌によると、EIMはサウスウエスト航空株の約11%を保有し、株主価値の最大化を強く求めている。EIMは、現在ごく一部に設けられているプレミアムシートの拡大や、手荷物料金の無料化の廃止など、収益性を高めるための具体的な施策を迫っている。

「物言う株主」に対し、サウスウエスト側は警戒感を高める。敵対的買収の回避策(いわゆる「ポイズンピル」)を採用し、特定の株主が12.5%以上の株式を取得した場合、その他の既存の株主が50%の割引価格で株式を購入できる措置を講じた。EIMの影響力を抑制し、会社の独立性を保つための防衛策とみられる。

コロナ禍まで47年連続黒字だったが…

だが、当面の方向性としては、なおも収益向上策の重視が続きそうだ。今年第2四半期、同社の売り上げは好調だったが、純利益は半減している。前年同期の6億8300万ドル(約1000億円)から、3億6700万ドル(約540億円)への急激な下降線だ。

格安航空とフルサービス・キャリアのハイブリッド、とも形容されるサウスウエスト航空は、サービスで優れるアメリカン航空やユナイテッド航空との競争に加え、スピリットやフロンティアなど格安航空との価格競争にもさらされている。この経営環境において、コロナ前の2019年まで47年連続で黒字を確保したことは驚異的だ。