長いブランクがネックになり再就職に苦労

先ほどの口調とは異なり、再就職活動時の戸惑いや苦労に話が進むにつれ、わずかではあるが顔色が曇り、言葉にも窮するようになる。

「あっ、すみません……お話しする内容は整理してきたつもりだったんですが……。新卒で総合職で入社した会社を自分の意思で辞めたのですから、多少の困難は予想していましたが……転職エージェントに登録して活動しても長いブランクがネックとなってなかなか再就職先を見つけられず……。それで、退職後も交流させていただいていた元上司に相談し、子会社に欠員があるから採用試験を受けてみないかと紹介していただいたんです。子育てとの両立も考えて、転勤のない、本社勤務の契約社員にさせていただきました」

再就職までの経緯を説明し終え、ようやく落ち着いた元の表情に戻ったように見えた。消費者からの問い合わせや相談に対応する部署に在籍していて、再就職当初は「緊張の連続だった」と言うが、今では「暮らしにメリハリが生まれました」と語気を強めた。

非正規女性の環境改善に尽力

38歳で再就職してから契約更新を重ねて7年後の2008年、45歳の時に人事部に配属となる。前回の契約更新時に希望した配置転換が叶ったのだ。

消費者相談窓口の部署では、管理職の正社員男性3人のほかは非正規雇用の女性たちで、中本さんと同じ契約社員や派遣スタッフ、パート・アルバイトなどさまざまな雇用形態、年代の女性が働いていた。その中には、子育て中や家族を介護しているなど家庭と両立させているケースも少なくなかった。人事部への配置転換は、非正規で働く女性たちが少しでも快適に満足して働ける職場環境づくりに取り組みたいと考えたからだった。人事部に配属となって数カ月経った頃のインタビューで、こう思いを明かした。

「長いブランクを経て再就職した当初は自分で仕事が務まるのか不安も大きかったし、子どもたちは小学校低学年と中学年でそこそこ手はかかる時期でしたので、高熱を出して急にシフトを代わってもらったりして……同僚の皆さんには大変助けていただきました。同じように家庭との両立で苦労しながらも頑張っている彼女たちの姿に励まされました。でも……皆さんがもっと生き生きと働けるようになるには、待遇や福利厚生の面など課題は多い。それで……何かしらお役に立てないかと……」

中本さんは、かつて総合職で入社した会社に勤務した約4年間の大半を人事部で過ごした。12年間のブランクがあるとはいえ、人事労務の知識・経験を踏まえ、再就職後の現場で感じた女性たちが家庭と両立させながら働き続けるうえでの問題点を、どうにかして改善したいという強い思いに駆られたようだった。

写真=iStock.com/mikkelwilliam
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