行動を絶やさず可能性を掘り起こす

現在の直江津ショッピングセンターは、無印良品と地元の食品スーパーが核店舗となった商業施設となっている。この組み立ては、良品計画の中期経営計画に描かれる2030年の事業イメージのひとつを先取りするものである。そこには次のようなイメージが示されている。

「地元で信頼されている食品スーパーの横などの、生活圏に、売場面積600坪超で出店し、食品スーパーや協業他社と共に、その地域での生活圏コミュニティセンターを構成する。買い物の場だけではなく、人々の暮らしの場となる。」(良品計画「中期経営計画」p. 17)

ここに示されている事業モデルは、「無印良品 直江津」の組み立てに通じるものであると同時に、良品計画にとっての「無消費」をとらえる道筋を示している。都会の消費者をターゲットに成長してきた無印良品は、郊外や地方都市の消費者の生活圏には、これまでほとんど出店できていなかった。しかし、直江津で実現したように、それまで無印良品とは縁が薄かった顧客を、店舗のコミュニティ化によってとらえることが可能となるのであれば、その先には新しい成長機会が大きく広がる。

冬の時代の国内市場を前に、縮こまってしまうのではなく、行動を絶やさず、「無消費」として市場に潜んでいる可能性を掘り起こす。このマーケティング姿勢こそが、小売業に限らず、企業に新たな未来をもたらすかもしれない。

関連記事
サイゼリヤを毎日食べている正垣泰彦会長が「ミラノ風ドリアはなんてまずいんだ」と文句を隠さないワケ
だからファミリー客が次々と来店している…快進撃を続ける「丸源ラーメン」と競合チェーンの決定的違い
タダ同然のお茶を「1杯5000円」で売り出し大逆転…佐賀・嬉野の茶農家が"薄利多売"をやめて起きたこと
日本のメディアは「営業」をナメすぎている…ホリエモンが「倒産寸前のラジオ局」を3カ月で黒字化できた理由
なぜ孫正義社長は「すぐ電話をかけてくる」のか…仕事がデキる人がメールより電話を多用する本当の理由