悪い姿勢は「柱が壊れた家」のようなもの
それは私たちが「構造体」だからです。これを忘れている人が多いのです。人体を、なんとなく「健康」「生命体」というイメージで捉えすぎて、私たちがただの構造物であることの重要性に気づかないのです。
構造物は、物理的につぶれてしまっては使い物になりません。そのためには、まず土台と支える柱があり、内部に空間をつくって、初めて何かの仕事が行えるのです。傾いている家には誰も住みたいと思わないし、上の屋根が落ちそうな作業場では誰もゆっくり仕事はできません。何度も言いますが、発端は骨盤の回転です。この回転が、背骨を上げ、肋骨を上げ、肩を後ろに持っていき、またその力で背骨自身を押し下げ、安定させるのです。
さて、骨盤や背骨の理想的な動きが、なんとなく分かってきたと思います。骨盤を回転させて、背骨を立てて「柱」として使っていくこと。それができないと、どこか他の部分が柱の役割を代行することになってしまいます。今回はそれを見ていきましょう。
図表3の右の人は背骨が柱として機能していますので、重力の力は背骨から足にきれいに流れていきます。重力の力とは「自分をつぶす力」です。これがきれいに流れていれば、自分はつぶれません。背骨をしっかりつぶすと、自分はつぶれないのです。シャキッと立っているのにラクそうですね。では左の人は? 背骨は柱として機能していません。
背骨が機能しなくなると、筋肉が無理をすることに
そのため、自分をつぶす重力が、体のお肉の部分にそのままかかります。なんだか苦しそうです。一番重い頭がどんどん下がって、その力が背骨を後ろ側に出していきます。こんな状態で用事や仕事をするのは、本当に苦しいことでしょう。
その結果、「頑張って踏ん張る」ことを強いられます。踏ん張るのは「筋肉」です。背骨が柱として機能してくれず、どんどん自分がつぶれる方向に行くので、仕方なく筋肉で支えて踏ん張るのです。これが「コリ」となっていきます。
建物で言えば、柱が機能を失って壁側に力がかかり、その壁にある窓が歪んでしまって開閉がしにくい……、みたいな状態です。柱が柱として機能してくれないと、他の何かが力を受け持つしかないのです。
力を受け持つには「かたさ」が必要で、やわらかいお肉ではダメなのです。だから踏ん張ってわざわざ「かたいお肉」=コリにして耐えるしかありません。体はなんと健気なことでしょうか。柱が仕事をしないせいです。骨が仕事をしてくれさえすれば、筋肉は筋肉の仕事に専念できます。
筋肉の仕事は、「動き」を生み出すことだけです。決して「上からつぶれてくる自分の体を支えること」ではありません。