「耳の疲労」が耳の寿命を縮める

「聞こえの神経」の細胞は主に「疲労」によって非常に劣化します。つまり、耳を酷使していると、耳の寿命は縮まります。早いうちに加齢性難聴を発症すれば、耳の不自由な後半生を生きることになります。逆に、ちゃんとセルフケアをすれば、その発症を遅らせることも、発症した加齢性難聴をUターンさせることもできます。

たとえば、日常生活でも次のようなことに気をつけるだけで、耳が疲れ切ってしまうのをかなり防ぐことができます。

1.テレビドラマの視聴や、会議インカムの使用は2時間以上続けない。使用した後はしっかり休む
2.イヤホンは1回1時間以内。音量は必ず下げる
3.イヤホンのノイズキャンセリング機能はOKだが、長時間使うのはNG
4.工場や工事現場などでは、できるだけ耳栓をする
5.カラオケ、コンサートでは、ライブ用の耳栓を活用

ビタミンB12で内耳の血流を促す

さて、疲れた耳をケアする食生活での工夫を紹介していきます。ほぼすべての耳鼻科医が難聴に処方する「メチコバール」という薬があります。この薬の有効成分は、ビタミンB12です。

ビタミンB12は、内耳の機能を改善します。さらに、細胞の発育や機能を正常に保ちます。特に血液を作るのに欠かせません。神経の働きにも重要です。ビタミンB12が不足すると、末梢神経の働きが悪くなり、耳鳴りや難聴が起きやすくなります。

ですから医師は、耳鳴り、難聴、めまいなどで神経障害が疑われる場合にも処方します。昔からある薬で、すぐに大きな効き目があるとはいえませんが、副作用の心配はありません。

「ビタミンB12」は栄養素ですから、食品でも摂ることができます。特にシジミやアサリなどの貝類に多く、サンマやイワシなどの青魚、牛・豚・鶏肉のレバー、卵やチーズにもたくさん含まれています。海苔にも少し含まれています。

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ビタミンB1と亜鉛も耳にいい栄養素

ビタミンB12に限らず、ビタミンB群は耳のために積極的に摂りたい栄養素です。「ビタミンB1」もまた、末梢神経や中枢神経の働きをよくする働きがあるので、積極的に摂ってください。ビタミンB1は、豚肉、大豆、ゴマ、玄米、鰻などにたくさん含まれています。

「亜鉛」は内耳の蝸牛かぎゅうにたくさん含まれている栄養素なので、不足させてはいけません。蝸牛は音の信号を電気信号に変換するところです。亜鉛を多く含む食品は、牡蠣、カタクチイワシ、牛肉、豚のレバーやワカメなどです。ちなみに、体内の亜鉛値が少なくなると味覚障害が起きます。

なお、栄養素ではありませんが、血液の循環を滞らせないために「水分」はしっかり補給してください。