難聴は大きく分けると3種類ある

難聴とは「聴覚障害」のひとつで、音を聞いたり区別したりする能力が落ちた状態です。音が「外耳→中耳→内耳」というルートで脳に伝えられるとき、どこかに問題が起きると、難聴が発症します。難聴は、その原因(どこで問題が起きたか、何の問題なのか)によって、次の3種類に分けられます。

・神経が障害されて起こる「感音(カンオン)性難聴」
・耳の機能が落ちて起こる「伝音(デンオン)性難聴」
・この両方の要素で起こる「混合性難聴」

「感音」「伝音」と見慣れない言葉でややこしいので、この本では「カンオン」「デンオン」と親しみやすいカタカナで書くようにします。

◇デンオン性難聴

音は聞こえているのに、言葉がクリアに聞き取れない難聴は「デンオン性」です。ザックリは聞こえるのですが、細かい子音が聞き取れずに、「ミカン」と言われたのに「イカン」に聞こえたりします。

デンオン性難聴は、主に「鼓膜の動き」が悪いことで起きます(まれに耳小骨離断などもあります)。音は聞こえているので、音を感受する「聞こえの神経」の細胞(聴覚神経細胞)は生きています。

◇カンオン性難聴

カンオン性難聴は、聞こえの「神経」そのものの問題で起こります。聞こえ方がストンと低下するのは、カンオン性難聴です。音がとびとびに聞こえたりします。

カンオン性難聴は、脳の問題に近いともいえます。耳の奥にある「内耳」や、さらにその先での障害で、音を感じる「神経」に問題が起こっている状態です。

神経というのは、要は電気のコードのようなものだと思ってください。途中で断線していれば、どんなに頑張ってコンセントを差し込んでも電気がつかないように、神経が障害されていると音は届きません。

耳たぶを触る人
写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです

ほとんどの「加齢性難聴」は2種類のミックスタイプ

デンオン性とカンオン性の2つが混合した難聴は、「混合性難聴」と呼ばれます。そして加齢による難聴のほとんどが、「混合性難聴」です。つまり、「デンオン性」と「カンオン性」が混じっているタイプです。どちらかひとつしかない人は、ほとんどいません。

ここが大切なポイントですが、デンオン性の難聴は改善できます。言い換えるとカンオン性の難聴は回復しにくいのですが、たいていの人が混合性の難聴なので、デンオン性による問題を改善できれば難聴をある程度まで治せるということです。

あなたにデンオン性難聴があるかどうかは、最終的には耳鼻科で検査を受けなければ判明しませんが、自分でも見当がつく判断基準があります。

□自分の声が頭の中で響く
□こもったように聞こえる
□音は聞こえるがビビッドでなく、言葉の輪郭がはっきりしない
(「そうなんだよ」が「おうなんだよ」と聞こえるなど)
□慢性鼻炎がある
□喘息がある

チェックリストの中に「喘息がある」という項目があることを不思議に思った人もいるかもしれません。実際、喘息の人はデンオン性難聴になりやすいのです。それは、喘息だと好酸球性副鼻腔炎、好酸球性中耳炎、特にお子さんは滲出性中耳炎になりやすく、それらの病気がデンオン性難聴の原因になるからです。チェックリストでひとつでも当てはまるようであれば、「デンオン性難聴」を疑っていいでしょう。