健康で長生きをするにはどうすればいいのか。耳鼻咽喉科医の木村至信さんは「耳の老化を防ぎ、聴力を保つことが大切だ。食生活を見直すことで『耳の寿命』を伸ばすことができる」という――。

※本稿は、木村至信『1万人の耳の悩みを解決した医師が教える 耳鳴りと難聴のリセット法』(アスコム)の一部を抜粋・編集したものです。

高齢者の耳
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人生100年時代、誰でも必ず「難聴」になる

歳を重ねれば、身体のあちこちが老化します。日本人の平均寿命は世界でもトップクラスを誇ります。しかし、介護なしに暮らせる期間(いわゆる「健康寿命」)は、平均寿命よりも10年ぐらい短いというデータがあります。

「100歳まで生きる」のと「100歳まで健康でいる」のは違うのです。

身体と同じように、耳も必ず老化します。歳を重ねれば、誰でもだんだん聞こえなくなってきます。これが「加齢性難聴」です。

私たちのDNAには、「何歳まで生きるか」「目や鼻や耳などの知覚がいつまでしっかりしているか」、すべてあらかじめ書き込まれています。もちろん「耳の寿命」も書き込まれています。

耳の老化そのものは防ぐことはできず、長生きすればするほど耳の老化も進みます。ですから、ほうっておけば誰でもいつかは加齢性難聴になります。

耳は少しずつ悪くなっていく

「音が聞こえにくい」「言葉が聞き取りにくい」、あるいは「まったく聞こえない」という症状を、「難聴」と呼びます。私が日々、難聴の人を診察していて実感するのは、「いつ頃からどう悪くなったのか」を自覚していない患者さんがとても多いということです。

診察室では、最初の問診で、次のような会話がよく交わされます。

【私】「ちょっと聞こえにくいなと、最初に感じたのっていつですか」
【患者さん】「う~ん、10年前ぐらいだったでしょうか」
【私】「10年ぐらい前?」
【患者さん】「いや、もっと前ですね。たぶん20年か30年ぐらい前……」

なんてざっくりした時間感覚でしょう。でも、難聴の患者さんにはこういうことが珍しくありません。みなさん、ちゃんと覚えていないのです。それは、その難聴が加齢によるものだからです。

難聴はだいたい50代以降から始まり、本格的な症状に悩まされるのは60代以降です。難聴が50代に始まっているのに、耳鼻科に来るのは60代の半ばぐらいになってからの人がほとんどです。これはとても残念なことです。