小さな子どもに多い「急性中耳炎」
子どもの耳トラブルにはどんなものが多いのかよく聞かれますが、もっとも多いのはやはり「中耳炎」でしょう。小さなお子さんをお持ちの親御さんたちの実感ともぴったり合うのではないかと思います。風邪をひいて熱が出て鼻水が出て、それが治ったと思ったら再び発熱……という時は中耳炎であることが多いものです。
中耳炎とは、鼓膜の奥にある「中耳腔」に細菌やウイルスが入り込んで感染し、炎症が起きる病気です。中耳炎には、風邪などが原因で起こる「急性中耳炎」、炎症部分から膿や水が出てたまる「滲出性中耳炎」、感染を繰り返して耳漏(耳からの排液)が続く「慢性中耳炎」などがあります。
このうち小さな子どもが最もなりやすいのは、急性中耳炎です。風邪による鼻水や咳が治りかける頃になりやすく、強い耳の痛みだけでなく、時に耳だれを伴うのが特徴。子どもは耳と鼻をつなぐ「耳管」が短くて水平で、また鼻をすすることが多いため、鼻から耳へと細菌やウイルスが移行しやすいのです。治療には抗菌薬(抗生剤)や痛み止めを飲む、また鼓膜に膿がパンパンに溜まっているときは鼓膜を切開するなどの方法があります。鼓膜を切開するというと怖く感じるかもしれませんが、通常2週間くらいで穴はふさがるので安心してください。
膿や水がたまり聞こえが悪くなる「滲出性中耳炎」
一方の滲出性中耳炎は、急性中耳炎が治った後にも中耳腔に水が溜まり、聞こえづらくなってしまう病気です。急性中耳炎と違って痛みはないのですが、だからこそ子ども本人も親御さんも気づきにくく、いつの間にか耳の聞こえが悪くなる、という問題があります。
音は振動として外耳道から鼓膜に伝わると、鼓室内にある耳小骨で22倍に増幅されて内耳に伝わります。ところが、滲出性中耳炎になって鼓膜の裏側に膿や水が溜まってしまうと、音が遮断されるだけでなく、鼓膜や耳小骨が振動しなくなって聞こえづらくなります。水に浸かった太鼓を叩いても、あまり音が鳴らないのと同じですね。粘度が高ければ高いほど、聞こえづらくなるのです。
滲出性中耳炎は、あまり重くない場合、内服薬で治療することができます。でも、粘液や水が多かったり粘度が高かったり、粘膜が肥厚していたりする場合は鼓膜を切開してチューブを装着し、浸出液が排出されるようにします。治療に1年くらいかかることもありますが、耳の中が乾いていくことによって治りやすくなるわけです。