「AI事業の現実」が大きなショックを与えた
同社の決算と大規模なリストラ発表で、AI事業の現実を理解した投資家は増えただろう。近年、インテルのゲルシンガーCEOはTSMCとの連携を強化した。チップレット生産方式など、AI向けの演算処理などを行う半導体の生産体制確立にも取り組んだ。いずれもAIブームに乗るための戦略だった。
しかし、4~6月期の決算は想定以上に悪かった。収益力の停滞に失望する投資家は急増した。8月2日のニューヨーク市場で一時、インテルの株価は前日の引け値から30%近く下落する場面もあった。インテル決算は市場に衝撃を与えたといえる。
主要な投資家は、AIの収益化には設備投資の積み増しが必要であり、その収益化に時間がかかることを改めて理解しただろう。8月上旬、画像処理半導体(GPU)で世界の9割近いシェアを持つ、エヌビディアの最先端チップの供給が遅れるとの報道もあった。
IT先端企業にとっても、価格が急騰したAIチップを購入し続けることは難しいとの見方も浮上した。期待先行で株価が上昇しただけに、調整スピードが急速であることを再認識した投資家は多い。
注目はリストラが増加する米国景気の行方
今後、安定したAIチップの供給、電力消費問題の解決、そして、AIの性能向上と安全性の確立など、企業は追加の設備投資を実施する必要がある。
今回のインテル決算を見ると、追加の投資がすぐに収益増加につながるとは考えづらい。投資家は、収益が伸び悩む、あるいは赤字事業を抱える企業の株を買いづらい。AI分野などでの成長戦略に投資家の納得を得るため、企業経営者にとってコスト削減の重要性は高まるだろう。
今後の注目点は米国景気の展開だ。基本的に、米国の景気は急激な落ち込みは回避できるだろうが、徐々に減速する恐れは高まるだろう。インテルのように、大規模にリストラを行って、収益性向上を目指す企業も増えるはずだ。
リストラの増加は米国の労働市場の緩みにつながるだろう。採用意欲の低下とともに、賃金の上昇ペースは鈍ると予想される。それに伴い、個人消費の減少懸念は高まりやすくなる。