「絶対捨てられる」チラシに施した工夫

地域とのコミュニケーションの大切さを感じた岩崎さんは、さらにもう一つ新しい試みに挑戦する。前社長の頃から週に1回、新聞折込をしていた店舗チラシのリニューアルだ。

「スーパーのチラシなんて絶対捨てられる。だったら絶対読んでもらえるものを作ろう」

今週のおすすめ商品に加えて、一押しのオーガニック食品の説明、社長のコラム、移住者インタビュー、その他、様々な地域情報を盛り込み、およそスーパーのチラシとは思えない情報量と熱量を込めていった。

例えば、2020年10月27日のチラシのテーマは「エロい話」。社長コラムには「エロい目で見てみる」のタイトルで、次のようなことが書かれている。

筆者撮影
ショッピング大黒の折込チラシ

「いま世界中で『エロ』が注目されています。(中略)この『エロ』とは地球環境にやさしいエコロジーの“エコ”と、健康で人と地球が共栄共存できる持続可能なライフスタイル“ロハス”のことで、『エコとロハス』で『エロ』です。(中略)僕たちもエロ~い目で、暮らしや世の中を見てみると未来へのヒントがたくさんありそうです」

「エロい話」の横には「天ぷら各種入荷!」「空き物件を有効活用しませんか!」といった文字が並ぶ。内容の雑多さ故か、ついつい隅まで読んでしまうワクワク感がある。

自ら原稿を書き、見よう見まねでデザインし、スーパーの事務室にある印刷機を回して毎週チラシを作った。作業は徹夜になることもあった。

すると見た目のインパクトや内容の面白さが受けて、次第にチラシを心待ちにする人が増えていった。町を歩いていると「毎回楽しみにしてるよ」と声をかけられることも珍しくなくなった。「息子が帰ってきた時に見せるんだ」と嬉しそうに話してくれる人もいた。

店舗での接客やお宅訪問、そしてチラシの効果もあり、段々と岩崎さん自身や新生ショッピング大黒のことを理解してくれる人も増えた。コロナに関わる噂についても「私らが噂は事実じゃないって言っとくけんね」と言ってくれる人も現れた。

「最初はいろいろあったけど、結局、助けてくれたのも地域の人たちでした」

常連客もまたよく買いに来てくれるようになり、来客数は多い時で1日500組まで回復した。