ホリエモンが「オタク」に注目するワケ

本章で繰り返し述べてきたように、宇宙ビジネスの民主化は急速に進み、スターリンクを超える宇宙ビジネスの可能性も拓かれつつある。どんな市場が出現し、何が求められているか。そこには想像をはるかに超えたものもありそうだ。

宇宙ビジネスの民主化の波に乗るのは、どんな人間なのか。そこでは、どんなビジネスが生まれるのか。まだ見ぬ可能性に私は思いを馳せている。

こうした未知の世界で成功するための秘訣は、どこにあるのだろうか。まず、自分でプロダクトやサービスを立ち上げ、ビジネスを創出しなくては、話は始まらない。

そこで私が注目しているのは、「オタク」と呼ばれる人々である。

「オタク」とは、特定の分野に詳しかったり、自分の好きな分野に傾倒したりしている人々のことだ。概して人付き合いが悪く、少し前までは「変人」扱いされることも多かった。

しかし、そのユニークな発想には、ときに目をみはるものがある。

たとえば、すでに世間的に認知され、受け入れられている「Vチューバー」なども、オタク発祥の新しいカルチャーである。

2022年6月8日、Vチューバーのグループを運営するエンターテインメント企業「ANYCOLOR(エニーカラー)」が東証グロース市場に上場。2日目となる9日の終値ベースの時価総額は1652億円となった。

写真=iStock.com/Cecilie_Arcurs
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「ニコニコ動画」大流行のきっかけ

アバターを使って「バーチャルなYouTuber」になろうなどという発想は、私には持ちようもない。「顔は出したくない。でもYouTuberとして活躍したい」という願望が理解できないからだ。

しかし、世の中には、顔を出すことで誹謗中傷されるリスクを背負うのは嫌だけど、自分の「出し物」を多くの人に楽しんでもらいたい、目立ちたい、人気ものになりたいと願う人、そしてそれを実際に好んで消費する人たちが意外と多いようなのだ。ANYCOLORの例は、そのことを物語っている。

また、動画配信プラットフォーム「ニコニコ動画」も、かつてはオタクの世界のものだったが、あるきっかけで流行した。

それは、ニコニコ動画上でミュージカル「テニスの王子様」につけられた自動生成字幕だ。

自動生成の精度はあまり高くない。それがそうとうおかしな具合に間違っており、なかにはかなり下品な言葉になっていたところもあったことが、笑いを誘った。通称「空耳字幕」――これをきっかけとしてニコニコ動画は大流行したのである。

初めて「空耳字幕」を見たとき、私は「これは流行る」と直感し、運営元のドワンゴの株を買った。予想は的中し、それまではオタクのものだったニコニコ動画は、「空耳字幕で笑う」という意外な用途により、新たなユーザー層を獲得していった。