余裕資金で株主価値を高めるアクション
魔法のようですが、割安に評価されている会社が積極的に自社株消却をすると株主価値は高まります。自社株が割安なときに積極的に自社株消却を行う経営陣は、少なくとも資本の効率的な使い方をよく知っているといっていいでしょう。
株主価値を高めるには、これまでの事業をさらに伸ばして1株利益を上げていくというやり方のほかにも、新規事業を行ったり、ほかの会社を買収したりして利益を上げていくなど、いろいろな方法があります。
伸び盛りの会社の場合は事業を拡張するために資金が必要になりますから、利益をまず事業につぎ込んでいくため、手持ち資金はそれほど多くはないかもしれません。
ところが、当面事業拡張の予定がなくて、手持ち資金が積み上がっている割安な会社の場合は、株主価値を高めるには自社株消却が一番いいと、私は思っています。余裕資金を使うだけで株主価値が高まるわけで、投資家にとってはうれしいことです。ですから、私は自社株消却をする会社は高く評価します。
消却した株数ではなく比率で判断する
ここで注意したいことがあります。A社の発行済み株式総数は1億株で、B社の発行済み株式総数は1000万株だとします。両社とも100万株の自社株消却をしました。どちらがより評価されるでしょうか。
自社株消却した株式数は同じですが、A社の場合は1億株のうちの100万株なので、比率にすると1%です。ところがB社は、1000万株のうちの100万株ですから、自社株消却した割合は10%になります。
同じ株式数を消却することによって、A社の株主は約1%だけ株主価値が上昇したが、B社の株主は約11%も株主価値が上昇したということになります。この場合は、B社の経営者のほうが、少なくともA社よりは、株主のほうを向いて経営しているといってもいいでしょう。したがって、B社のほうがA社よりも評価できます。