理系父は「禁断の方程式」を教えてしまう

理系出身の父親は、自分のやり方を押しつけてしまうケースが多い。一番やってはいけないのが、禁断の方程式を教えてしまうことだ。中学受験を経験していない親は、受験算数というものがどういうものかを知らない。問題を前に図を書いたり、数字を全部書き出したりして、ああでもないこうでもないと頭をひねっているわが子を見て、「一体、いつになったら答えが出るんだ!」としびれを切らし、「こんな問題、方程式で解けばいいじゃないか!」と効率を押しつける。

だが、抽象理解がまだできていない子供には、xやyといった記号は、何か得体の知れないものに感じられ、「よく分からないけれど、これを使うと解ける」となってしまう。しかし、実際のテストや入試では、それと同じように解けるものは少ない。なぜなら、設問者は小学生の子供が今ある知識を総動員させて答えが出せるように、あえて考えさせる問題を作っているからだ。それを知らずに、親である自分が成功できた方法を教えても、成績は上がらない。かえって、子供を混乱させる。

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一度教えたのに、できない。なぜだ?

親にこの感情が湧き上がると、負のスパイラルの始まりだ。

親が自分の感情をコントロールできなくなる

子供に勉強を教えてはいけない理由──。それは、親も子も気持ちのバランスがガタガタと崩れてしまうからだ。

中学受験の勉強は、それを専門に指導する塾やプロの力が不可欠だ。なぜなら、発達が未熟な小学生の子供に、難度の高い学習を進めていくには、勉強面だけでなく精神面からのアプローチも必要になるからだ。こうしたスキルを身につけている親であれば、子供の勉強を教えてもいいだろう。しかし、多くの場合はこうしたスキルを持っていない親が、自分のやり方とペースで教え込もうとする。

ところが、子供はちっとも理解してくれない。はじめは「なぜだろう?」という気持ちで収まっているが、それが続くと「なぜ」の理由を探す気持ちがうせて、「どうして教えたことが分からないのだ?」「何度言えばできるようになるんだ!」といったイライラの感情があふれ出てくる。すると、自分の感情をコントロールできなくなり、どのように懲らしめてやろうかという悪意が芽生え、もっときつい言葉を投げるようになる。