大手スーパー側が見いだしたメリット

提携先であるイトーヨーカドーの側も、一部店舗でOniGOとの連携を初めた段階で、従前からのネットスーパーとは異なる需要を獲得できることに気づいた。

イトーヨーカドーが従前より提供してきたネットスーパーのサービスには、クイックコマースほどの迅速さはない。そのため飲料や酒類などの箱買い、あるいは精米といった、買い置き用の計画購買に利用されることが多い。

これに対して、OniGO経由のイトーヨーカドーの利用は、非計画型が多くなる。利用者の中心は20~50代の女性である。急な体調不良や大雨など、計画できない事態に対処する利用者に、OniGOは役立つ。OniGOがイトーヨーカドーから届ける商品の価格はスーパーの店頭での購入より10〜20%ほど高く設定されており、そこに配送料の330円が加わる(5500円以上で配送料が無料になる)。それでもクイックコマースを利用したいというシーンは、前述のように確実に存在する。

他社連携でも威力を発揮するOniGOの受注システム

こうした他社との連携の中で大きな役割を果たしているのが、OniGO独自のクイックコマース向け受注システムである。

OniGOの利用者は、スマホの専用アプリを通じて注文を行う。画面表示や操作性などは、非計画型の購買を想定した設計がなされている。さらに受注用のデータベースには、各店舗が取り扱っている商品の情報だけではなく、どの品がどの棚のどの位置に置かれているかというデータも入力されている。つまり自社のダーク・ストアだけでなく提携スーパーの店舗でも、商品のピックアップを行う担当者は商品の情報だけではなく、効率よく店内を回る順路までを参照することができる。

OniGO経由でイトーヨーカドーの店舗で買い物をした場合、店内のピックアップはイトーヨーカドーの店員が行う。これをOniGOの配達員や、連携しているUber Eatsの配達員が受け取って、購入者の元に配達するという流れだ。

こうしたシステムの開発をOniGOが先行して済ませているからこそ、一見競合しそうなUber Eatsとの協調も成り立つ。フードデリバリーとクイックコマースでは、取り扱う商品数が大きく違う。ウーバーが単独でクイックコマースに対応しようとすれば、自社の受注システムを新たに構築しなければならない。クイックコマース用のシステムを自社で持たないUber Eatsが、OniGOにとって競合となることはない。