「小商い」に活路あり
私は2010年から独立して自営業を始めた人間である。それまでは大企業でマーケティング統括をやっていたから、肩書は1つしかなかった。
しかし、現在、会社経営者、大学教員、ビジネス書作家、マーケティングコンサルタント、フィールドワーカー、教育者といった具合で、肩書がたくさんある。「すごいですね」と言われることもあるが、実状は小商いの集合状態なのである。
結果、ビジネスを1つに頼らず、複数の小商いを持つことでリスクヘッジ策となっている。自分が得意な領域を分散的に持つことによって、収益の安定化を図っているともいえよう。
「デジタル小商い」の無限の可能性
さらに付け加えれば、サラリーマンはデジタルでマネタイズする術を就業期間中に習得してほしい。こう考えるのは、私自身のコロナ禍の経験・教訓からである。
コロナ禍で自営業の私が数年耐えられたのは、ウェブ上でZoomなどのツールを駆使して、研修ビジネスができたこと、そしてFacebookで世界中の仲間たちと日々コミュニケーションが取れて、有料イベントや勉強会を開催できたからだ。
デジタルの良さは地理的条件を超えて、あらゆる人と繋がれることだ。たとえば、人口減少が著しい地方に暮らしていても、ネットの技術とマネタイズ方法さえ体得していれば、ビジネスは可能になる。
これらの点を考えると、来るべき退職後に目指すのは「デジタル小商い」なのかもしれない。インターネットはすでに個人がマネタイズできる環境が整備されている。ユーチューバー然り、得意な分野をコンテンツ化し、楽しみながら稼いでいる人たちがたくさんいる。
私たちは、いまこそ「ワークキャリア(仕事だけに限定したキャリア観)」を脱して、「ライフキャリア(人生の長い時間軸でのキャリア形成)」という新しいフィルターで現実を見て、将来に向かって小さく動き出すべき時なのである。