「小商い」に活路あり

私は2010年から独立して自営業を始めた人間である。それまでは大企業でマーケティング統括をやっていたから、肩書は1つしかなかった。

しかし、現在、会社経営者、大学教員、ビジネス書作家、マーケティングコンサルタント、フィールドワーカー、教育者といった具合で、肩書がたくさんある。「すごいですね」と言われることもあるが、実状は小商いの集合状態なのである。

結果、ビジネスを1つに頼らず、複数の小商いを持つことでリスクヘッジ策となっている。自分が得意な領域を分散的に持つことによって、収益の安定化を図っているともいえよう。

「デジタル小商い」の無限の可能性

さらに付け加えれば、サラリーマンはデジタルでマネタイズする術を就業期間中に習得してほしい。こう考えるのは、私自身のコロナ禍の経験・教訓からである。

原尻淳一、千葉智之『ライフキャリア』(プレジデント社)

コロナ禍で自営業の私が数年耐えられたのは、ウェブ上でZoomなどのツールを駆使して、研修ビジネスができたこと、そしてFacebookで世界中の仲間たちと日々コミュニケーションが取れて、有料イベントや勉強会を開催できたからだ。

デジタルの良さは地理的条件を超えて、あらゆる人と繋がれることだ。たとえば、人口減少が著しい地方に暮らしていても、ネットの技術とマネタイズ方法さえ体得していれば、ビジネスは可能になる。

これらの点を考えると、来るべき退職後に目指すのは「デジタル小商い」なのかもしれない。インターネットはすでに個人がマネタイズできる環境が整備されている。ユーチューバー然り、得意な分野をコンテンツ化し、楽しみながら稼いでいる人たちがたくさんいる。

私たちは、いまこそ「ワークキャリア(仕事だけに限定したキャリア観)」を脱して、「ライフキャリア(人生の長い時間軸でのキャリア形成)」という新しいフィルターで現実を見て、将来に向かって小さく動き出すべき時なのである。

関連記事
国家公務員は東大生にとって3K職場になった…東大卒が1割を切り、MARCH+日東駒専クラスが続々合格のワケ
月4万円だった健康保険料が「定年退職後」に月9万円に…体験しないとわからない「国保負担」のすさまじさ
「少子化はむしろ好都合」エミン・ユルマズ断言「人口減の日本は経済成長を遂げ、中国インドが没落する」
これを知ると8割の人が定年後も働き続ける…60歳以降も1日でも長く勤務先に残り続けて「年金強者デビュー」
仕事もない、話し相手もいない、やる事もない…これから日本で大量発生する「独り身高齢男性」という大問題