「ワークキャリア」から「ライフキャリア」へ

これまでのキャリアの前提条件は、仕事だけに閉じ込められていた。

就業期間の40年がキャリアを考える時間だった。私たちは人生を80年とし、就業前の期間をL1(20年)、就業期間をL2(40年)、老後期間をL3(20年)と大まかに3つの期間に分けて考えていた。この区分けに基づいて年金システムや退職時期も設計されていた。

しかし、昨今人生100年時代となり、前提条件が瓦解する。さらに20年長い人生を再設計する必要が出てきたのだ。

新しい区分は、次のように4つに分けられるかもしれない。期間L1(22年)、就業期間L2(43年)、自営期間L3(15年)、老後期間L4(20年)である。このように就業期間L2だけでなく、自営期間L3も踏まえて、人生丸ごとキャリアとして捉え直す必要があるのだ。

【図表1】長寿化で生じるキャリア観の変化
人生100年時代は、キャリアを4つの期間で捉え直す必要がある。

退職時期を65歳とし、老後期間を20年と設定すると、その間の15年間は自力で働かなければならない厳しい現実が見えてくる。しかし、就業後、また誰かに雇われるのは精神的にも肉体的にもしんどい。

それよりは、これまでの経験や人脈を生かして、自営業を行うことが最善策ではないか、と最近考えるようになった。

日本人に必要な「脱」雇われマインド

ところが現実を見ると、日本人の多くは、自分の資金を投資してビジネスを立ち上げ、運営する経験がほとんどない。多くが他人に雇われて報酬を受け取る雇用者なのである。

自営期間L3の15年という100年時代の課題を突きつけられているにもかかわらず、「準備」する気配すらないサラリーマンは多い。これは先の前提条件の瓦解を察知していない危険信号である。

改めて、日本の労働人口において、雇用者数と自営業主はどれくらいを占めるのか、調べてみた。

総務省統計局の「労働力調査」を見ると、2023年度の雇用者数は6076万人である。労働人口全体が6747万人だから、全体の90%が雇用者ということになる。

一方で、自営業主は512万人で全体の8%程。家族従業者(家族が経営する事業を手伝っている人)は126万人で2%だった。

この数値と比較検討するため、労働力調査が始まった1953年(70年前)にさかのぼってみた。この年の雇用者数は1660万人である。労働人口全体が3913万人だから、全体の42%である。