PBRが「ずっと1未満」の企業は問題アリ

経営が健全で事業も順調、安定して利益を出している企業、つまり「何の憂いもない企業」は、PBRの数値が1未満になることはほとんどありません。優良企業のPBRが1未満となれば、「底値」と捉えられ、多くの投資家から買い注文が入って株価は上がり、PBRの値も1以上に戻るのがセオリーです。

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PBRの数値が1未満となったまま戻らない銘柄は、経営に何らかの問題があり、PBRの数値が下がったまま戻らないのだと考えるほうが自然です。こうした銘柄は、決算短信などには出てこない純資産中の「含み損」を投資家が嫌い、株が売られて株価が下がり、結果的にPBRの数値が低くなっている可能性が高いのです。

たとえば、老朽化した生産設備などは、購入時の価格で純資産に組み込まれており、実際に売却すれば二束三文になるケースもあります。このため、決算短信には出てこない含み損がある銘柄は、株価の人気が下がり、PBRの数値がますます小さくなる傾向にあります。

PBRだけで購入を決めてはいけない

低PBRの銘柄は不景気の時に注目が集まります。2024年5月の時点の株式市場は、2012年から突入した円安の好影響が続いており、まずまずの活況を呈しています。そのため、図表2で紹介したPERの値が優秀な銘柄に人気が集まる傾向があります。今後、株式市場全体が低迷して低PBRの銘柄が注目を集めるようになった際、伸びてくる銘柄に注目しましょう。

PBRの数値が低い銘柄は、確かに割安という見方がある一方、市場がその会社に対し低い評価を与えているという見方もできるため、慎重に見極めましょう。実際にPBRが1を下回っている会社の中には、業績が芳しくないところも数多く見受けられます。

くれぐれもPBRだけを見て購入に踏み切らないでください。すでに紹介したPERや、本書で紹介しているROEとROA(Return On Assets、総資産利益率)の数値も確認し、総合的に判断することが大切です。

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