成長中の企業はPERが高くなりがち
PERの数値は小さいほどお買い得ということになりますが、どのくらいの数値以下ならOK、という基準のようなものはないと考えたほうがいいでしょう。なぜなら、PERの数値は業種によって極端に大きくなったり、小さくなったりするからです。
たとえば、新しい技術の開発とともに今後の成長が期待されるバイオ関連の銘柄や、成長著しいIT関連の銘柄などは、将来性を見込まれて株が買われ、PERの数値が驚異的に高くなります。こうした銘柄は、PERの数値が100以上になることも珍しくありません。
一方、古くからあるビジネスモデルで経営を続ける、いわゆるオールドエコノミーと呼ばれる企業の場合、PERは低くなりがちです。安定的な収益は挙げるものの、将来、飛躍的に成長することは考えにくく、株価が大きく上がることもありません。
その結果、PERの数値も低くなるのです。
当期純利益のうち「特別損失」に要注意
PERの数値から銘柄の割安感を判断する際に注意したいのが「当期純利益の内容」です。当期純利益には不動産や有価証券の売却益など、業績とは無関係な「特別利益」も含まれていることがあるからです。もし、前期と比較して極端にPERの値が低くなっていた場合、決算短信の2ページ目以降をじっくりと読み、特別利益の有無について確認してみましょう。
反対に、当期純利益に「特別損失」が含まれていた場合、PERの数値は高くなり、割高と判断されやすくなります。業績は順調に伸びているにもかかわらず、社債の償還期限などにより一時的に多額の返済が行なわれた場合、当期純利益は減り、PERの数値は高くなりますが、これは業績が悪化したわけではなく、PERの値が大きくなっても一概に割高とは判断しきれません。
最も大切なのは、後述する「PBR」や、本書で解説している「ROE」(Return On Equity、株主資本収益率)など、ほかの指標と比較し、総合的に判断することです。PERは確かに重要な指標ですが、PERだけで株の売買を決定するのはあまりにも危険です。