仕組みのなかで戦うか、見えてないものを追い求めるか

私が15年勤めた金融会社は、良くも悪くもわかりやすい大企業であったため、会社としての仕組みができあがっていました。「決められたことを、決められた期間に、決められたやり方でやりきる」ことで成果が上がる土台とルールがあったのです。

私も、そのような仕組みの中で努力をし、20代で課長職を拝命し、約150人の部下のマネジメントなどを経験してきました。ゆえに、ルールがあることの大切さも深く理解しています。

しかし、今はそのような“大企業”が、時代の変化についていけずに業績を落としたり大きな課題にぶつかったりしている状況です。

もちろん、大企業の社長や取締役、役員の方々も優秀なビジネスマンであることに間違いありません。ある程度できあがった仕組みやルールの中でスピーディーに最大の成果を上げていることを、私もよく知っています。

ただ、「仕組みもルールもない、まったく新しいこと」に挑戦する際には、天才の感覚に敵うものはないと思っています。天才の感覚とは、極端な言い方になってしまいますが「私たちには見えていないものが見えている」という感覚です。

天才の見ている景色を理解しようと考えられるか

約束されたことがない、何が起こるかわからない「新しいビジネス」の世界において、私たちに見えているのがせいぜい1km先だとしたら、天才は10km、100km先まで見えているのです。

いえ、「見えている」というよりは「常により遠くを見ようとしている」と言ったほうが正しいでしょうか。その結果、人より先に、一手、十手、百手先が予測でき、行動に移せるのだと考えています。

それなのに、ビジネスにおいて朝令暮改を良しとしない風潮がなかなかなくならないのは、なぜなのか。そこにはおそらく「ルールで動くことが前提なのに、そのルールを変えられた」という気持ちが、普通であれば条件反射的に生まれてしまうからでしょう。

松浪宏二『超一流の凡人力』(クロスメディア・パブリッシング)

しかし、天才はそもそもビジネスで一定以上の成果を出している人です。そして、あなたは少なからず「超一流の凡人になりたい」「この人に認められて、成果を出したい」「この人についていき、同じ景色が見たい」「この人の役に立ち、共に喜びを分かち合いたい」と思っているはずです。

それであれば、一般的に「朝令暮改」と思われるようなシーンに遭遇したとしても「朝と言っていることが変わった。この数時間の間に、どんな情報に触れ、どんな思考を巡らせたのだろう」と、天才の見ている景色や感じていること、ロジックを理解しようと考え、動いていくことが大切なのではないでしょうか。

それが、天才の伴走者としてのあるべき姿であり、一流の凡人だと思うのです。

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