「腹を立てる」だけでは何も変わらない
たとえば、私が明石市長として18歳までの市民の医療費無料化を実施した時、国はペナルティとして国民健康保険の補助(国庫負担金)を年間で1800万円減らしてきました。厚労省は以前から、18歳未満の医療費助成を行う自治体に対して、このような“制裁措置”を実施していました。
官僚のマインドとしては、無償にすることで病院に行くほどでもないような人まで過剰に受診して医療費がかさんでしまうから、そんな助成をする自治体にはお仕置きだ、というわけです。理不尽このうえありません。
「子どもの応援」を掲げているクセに、自治体が子どもの医療費助成をやったらペナルティを講じてくる厚労省。どこを向いているのかと頭にきますが、財政に余裕があるわけでもない自治体にとっては、現実問題として、医療費助成の予算が必要なうえに国庫の補助まで削られたらダブルで負担が増えるので、腹を立てているだけではどうしようもない。
「誰を動かせば何がどう動くか」を常に考える
私は全国市長会と全国知事会に根回しをして、「子ども医療費無料の自治体に対するペナルティ制度の廃止」を重要要望に上げてもらいました。さらに、市長会や知事会だけでは弱いので、医師会と関係の深い自民党の議員にも掛け合って予算委員会で質問してもらい、厚労省に答弁させた。そういう押したり引いたりがあって、ようやく2023年4月、厚労省がペナルティ廃止の方針(18歳までの部分)を打ち出しました。
つまり、単に腹を立ててケンカ腰になっていても物事は動きません。先ほども言ったとおり、政治はケンカと言っても、本当にケンカするわけではありません。地方から声を上げるのと同時に、与野党問わずさまざまな議員に働きかけて質問に立ってもらい、最終的には医師会と関係のある議員にダメ押しをしてもらって厚労省を動かしたように、どの人を動かせば、何がどう動くのかという理屈で考えていくわけです。