「できたて」スイーツを提供する高級路線の店も

しかも流行スイーツは、洋菓子より手軽なイメージを持たれているモノが目立つ。りんご飴やポップコーン、ドーナツなど歩き食べができる、洋菓子より価格帯が安い、あるいはフレーバーやトッピングのバリエーションが豊富で映えるなど、現代人の嗜好を捉えた商品も多い。しかも専門店の場合、スイーツ自体は1種類なので、仕入れや製造のコストも抑えられる。一方、高級路線で勝負する店もある。最近増えているのが、酒に合うチョコレートやアイスなどを開発したバーや、デザートコースを出す店だ。6~7年ブームが続くアフタヌーンティーも、スイーツや料理に凝った企画が増え、高級化が進む。

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これらの店が扱うのは、テイクアウトするケーキとは異なり、できたてが魅力のデザートだ。バブルが崩壊して以降、グルメ化が進んだこともあり、数千円でコースに仕立てる飲食店も多くなった。レストランでコース料理をいただき、デザートでしめる楽しみを覚えた人は多い。できたてモンブランなど、食事と切り離してデザートを出す店もある。

昭和期とは消費シーンが大きく変わった

昭和の頃から愛されてきたスポンジケーキ中心の洋菓子店の場合、店主や職人の高齢化が経営悪化につながっている場合がある。店に新しいモノを取り込む発想やエネルギーが不足していることもあるだろう。また、少ないながら長年の顧客が中心の店は、路線変更をしにくい。速過ぎる時代の変化が、3つ目の要因である。

先に挙げたように、スイーツの消費シーン自体が大きく変わっている。庶民がケーキに親しむようになったのは高度経済成長期以降。子どもの誕生日やクリスマスにホールケーキを買って家族で分ける、あるいはよその家庭を訪問する際の手土産にする、などの場面で洋菓子店のケーキは親しまれてきた。町の洋菓子店は、そういう需要を見込んで次々と誕生している。1950年代後半から1980年代初め頃までは、歴史上稀に見るライフスタイルの均質化が進んだ時代で、庶民も自由になるお金と時間を持てるようになった頃だ。今から考えれば、作れば売れた時代だったと言える。

しかし、平成になる頃から、再びライフスタイルの多様化が進む。人々は結婚するとは限らず、結婚しても子どもを産むとは限らない。変化に合わせて洋菓子店もホールケーキのサイズを小さくしたが、そもそもケーキが選ばれる場面が減少した。都会では家庭を訪問し合う機会が多くないし、大人中心の家庭訪問だと、手土産はワインかもしれない。