ピッチャー出身としての意見をコーチに伝えるようになった

実はもうひとつ、合議制にしてよかったと感じたことがあります。

私は確かに、現役時代はピッチャーであり、バッティングの技術論については、バッティングコーチにはかないません。ただ、「ピッチャー側から見た、バッターの打ち取り方」という、バッティングコーチにはない視点を持っています。その「ピッチャーからの見え方」をバッティングコーチに伝え、すり合わせることができるようになったのです。

「今日の相手の先発ピッチャーのこの球種、この選手の今の状態では、打ち返すのが難しいかもしれない。彼よりも、左バッターのこの選手のほうが対応しやすいんじゃないかな」。このような意見を、私のほうからも伝え、バッティングコーチに考えてもらえるようになりました。

スタメン・打順の決定には、以前よりも多くの時間がかかるようになりましたが、その分、試合展開のシミュレーションはより綿密になり、あらゆる視点をもとにあらゆる状況を想定した最適なスタメン・打順が組めるようになりました。

選手が100%の力を発揮できるようにサポートする

もしかしたらみなさんは、「監督」という仕事に、「チームを引っ張るリーダーである」というイメージを持っているかもしれません。

工藤公康『プロ野球の監督は中間管理職である』(日本能率協会マネジメントセンター)

私自身、2016年に失敗と挫折を経験するまでは、そのようなイメージを持っていました。

しかし今では、監督は「みんなを引っ張る存在」ではなく、「みんなを押す存在」なのだと考えています。

グラウンドでプレーをするのは、監督ではなく選手たちです。ならば、監督が先頭に立って選手を引っ張るのはおかしい。選手たちが不安なく、自分の持てる力をグラウンドで100%発揮できるよう後ろから押してあげるほうが、監督のイメージとしてはしっくりきます。

「先頭に監督ありき」で選手たちが走るのではなく、選手たちがのびのびと走るのをサポートしながら、ときには軌道修正してあげるのが監督の仕事だと、今では考えています。

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