優れたリーダーとはどんな人物か。元ソフトバンクホークス監督の工藤公康氏は「日本一になった翌年に大失速を経験し、強権的なリーダーシップは脆いことを痛感した。みんなが意見を言える場を準備することで、チームがうまく回り始めた」という――。

※本稿は、工藤公康『プロ野球の監督は中間管理職である』(日本能率協会マネジメントセンター)の一部を再編集したものです。

西武に敗れ、3連敗し厳しい表情のソフトバンク・工藤監督(中央)
写真提供=共同通信社
西武に敗れ、3連敗し厳しい表情のソフトバンク・工藤監督(中央)=2016年8月18日、京セラドーム

日本一になって一方通行のコミュニケーションが増えた

私は2015年にホークスの監督として就任するにあたり、ユーティリティプレイヤー(複数のポジションを守れる選手)の育成をはじめとする数々の策を打ち出しました。

そして現実に、日本一になれた。確たる結果を得たことで、「このやり方でいいんだ」と自信がついた反面、選手やコーチ、トレーナーに対しても、「私のやり方でやってください」という一方通行のコミュニケーションが増えていったように思います。

選手・コーチ・トレーナーから上がってくる意見や提案も、表面的には聞いたものの、話し合いの最後は「私のやり方でやってください」で終わっていました。

「なんだ、結局は自分の話を聞き入れてはくれないではないか」「自分は監督がやりたいことを実現するための存在でしかないのか」――。選手・コーチ・トレーナーの中に、このような不満が溜まっていったことは想像に難くありません。

ただ、2015年は日本一になり、2016年シーズンも、開幕してからしばらくは首位を独走していましたから、ある程度、「まぁ仕方ない」と納得してもらえる部分はあったのでしょう。

しかし2016年のシーズンを終えたとき、私は「自身の立ち居振る舞いを見直さなければならない」と痛感することになります。