無意識の思い込みが非効率の原因

聞きなれない言葉なので、わかりやすく説明すると、アンコンシャスバイアスというのは、無意識の思い込みのことをいいます。

「朝早く起きれば仕事の能率が上がるはず」といった実際の検証もない思い込みが最たる例で、多くの人がそうした思い込みのために自分の能力を十分に発揮できないでいるのです。

それでは、そうした思い込み、言い換えるとバイアスをなくし、「タイパ」などと呼ばれることも多くなったタイムパフォーマンスやスケジュール管理をしっかり行える仕事術を身につけるにはどうしたらよいのでしょうか。

その答えは「滞り」をなくすことにあります。特定の時間帯や作業に集中しようとすると、心理的、あるいは物理的に、ある種の「滞り」が発生してしまうのです。

その負荷は想像以上に大きなものがあります。スケジュール、プラン、あるいは目的・目標の設定などがバイアスでゆがめられてしまうと、滞りの発生を防げなくなってしまいます。

そうなると、いくら努力しても、成果は得られず徒労に終わってしまいます。

したがって、タイパを向上させるためにまず求められるのは、時間や作業のスムーズな流れに対して悪さをする「滞り」を解消することなのです。

その滞りを取り除いていかないと、どんなに綿密なスケジュールをつくり上げていっても、密度の濃い仕事をこなしても、なかなか成果を得ることができないのです。

ピークとオフピークの落差が「滞り」になる

私の専門としている「物流」は、「モノの流れ」をスムーズにすることが大きなポイントとなります。

たとえば、お中元・お歳暮の時期などのピーク時には関連商品の取扱数量は大きく増えます。それ以外のオフピークの時期には、逆に物量が大きく減少してしまうこともあります。

このように大きく増えたり減ったりする物量を滞りなく、あるいは流れすぎないように、うまく取り扱っていくことがきわめて必要になるのです。

あるいは、ラッシュ時の通勤について考えてみてください。

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ラッシュ時の通勤電車には毎日うんざりしている人も多いでしょう。しかし、満員電車の状態が1日中続いているかというとそうではありません。

ラッシュの時間帯は早朝のせいぜい1時間から2時間と夕方の帰宅の時間帯だけです。日中の電車は逆にガラガラのこともあります。

そこで電鉄会社は「出勤時間や退社時間をずらしてほしい」と、オフピーク通勤を奨励しています。滞りを解消することで、通勤にかかる身体的・精神的な負担が軽減できるのです。

人の行動についても同じような考え方が当てはまります。

「忙しくて時間がない」という人は、ピーク対応に失敗している可能性があります。「仕事の効率が悪い」という人はピークとオフピークの格差が大きすぎたり、バランスが悪くなりすぎたりしている可能性があります。

もっとも、「滞り」をなくすという理屈はわかっても、それを各自の行動に当てはめていくのにはちょっとしたテクニックも必要になります。

そこで、現在、関わっている仕事はもちろんのこと、仕事上の人づきあい、趣味、資格取得などのキャリアアップに不可欠な勉強等々、どこに「滞り」が隠れているのかも明らかにしていきたいと思います。