川勝知事が辞めるとあっさりとボーリングを容認
ここまでこじれにこじれたボーリング問題だったが、川勝氏が辞任し、その直後に開かれた地質構造・水資源専門部会は、山梨県の調査ボーリング再開をあっさりと容認した。
ただ、調査ボーリングで静岡県の地下水が山梨県に引っ張られるとしたら、調査ボーリングよりも先進坑掘削がさらに大きな問題となってしまう。
調査ボーリングの断面直径は約12~35センチだが、先進坑のトンネル幅は約7メートルとケタが全く違う。
静岡市の難波喬司市長は昨年6月、「調査ボーリングによる湧水量は、先進坑掘削に比較して、1.8%程度しかないから調査ボーリングを進めるべきだ」と発言した。
この発言を逆から考えれば、先進坑掘削で出る湧水は膨大な量となるから、「先進坑掘削をどこで止めるか考えるべき」となってしまう。
本坑であるリニアトンネルの幅は約14メートルもあり、本坑掘削では先進坑掘削とは比べられないほどの大量の湧水量が懸念される。
「静岡県の地下水はどんどん抜けてしまう」(森下部会長)が現実になる恐れもある。これでは山梨県のトンネル工事はできないことになる。
鈴木知事の下で「スピード解決」を
鈴木知事は6月19日、山梨県内の調査ボーリングだけでなく、先進坑、本坑の掘削工事すべてに『「静岡県の水」という所有権を主張し、返還を求めるものではない』ことを前提に合意した。
山梨県側は、以前から先進坑、本坑掘削工事すべてでの合意の働き掛けを行ってきた。
6月7日に都内で開かれたリニア沿線知事による「期成同盟会」開催前に、懇意の長崎、鈴木の両知事による非公開の懇談が行われた。その席で長崎知事があらためて山梨県の立場を理解してもらえるよう要請したとみられる。
そもそも「超自然現象」「トンデモ科学」と言える「静岡県の水が引っ張られるから、山梨県内の調査ボーリングをやめろ」がまかり通ったこと自体がおかしかった。
これまで川勝氏の新たな言い掛かりを、森下部会長らが補強して、静岡県行政が支えてきた。
今後、鈴木知事の社会常識に沿った判断で、スピード感を持ったリニア問題の解決が図られることに期待したい。