「オカルト主張」で妨害を続けた川勝前知事

静岡県は1月30日、「地下水が流出する恐れの低いと考えられる区間を、科学的根拠に基づき設定し示すこと」などとする意見書をJR東海に送り、執拗しつように調査ボーリングを妨害しようとした。

それでもJR東海は2月21日から山梨県内の調査ボーリングを開始した。

川勝氏は「本当にけしからん」と怒り心頭に発し、「静岡県側の断層帯と山梨県側の断層帯がつながっている可能性を示したデータがある」などと、またまた違う新たな問題を持ち出した。

その直後の2月28日の会見で、川勝氏は「調査ボーリングをするという差し迫った必要性は必ずしもない」と勝手に決めつけた上で、「山梨県側の断層および脆い区間が静岡県内の県境付近の断層とつながっている。それゆえ、いわゆる『サイフォンの原理』で、静岡県内の地下水が流出してしまう懸念がある」とトンデモない主張をしたのだ。

もし、この2つの断層でサイフォン作用が起きてしまえば、まさに超自然現象である。つまり、「世界最大級の断層地帯」が続く南アルプスの地下は“オカルト世界”になってしまうのだ。

その後、川勝氏はさすがに「サイフォンの原理」の誤りを認めたが、今度は森下部会長が「高圧水で静岡県の地下水が抜けてしまう」などと主張し、川勝氏もそれに乗っかった。

静岡県は5月11日、「静岡県が合意するまでは、リスク管理の観点から県境側へ約300メートルまでの区間を調査ボーリングによる削孔さっこうをしないことを要請する」とした意見書をJR東海に送った。

地下水に「健全な水循環」などあるのか

もう一方の当事者である長崎知事は「山梨県の工事で出る水はすべて100%山梨県内の水だ」と断言した上で、「山梨県内のボーリング調査は進めてもらう。山梨県の問題は山梨県が責任をもって行う」などと強い調子で山梨県内の調査ボーリングを進めることを宣言した。

それでも静岡県は2024年2月5日になって、「リニア中央新幹線整備の環境影響に関するJR東海との『対話を要する事項』について」と題する記者会見を開いた。

この会見で、「山梨県内の調査ボーリング問題」を既成事実かのように今後の「対話項目」に入れてしまった。

「トンネル工事が県境付近に近づくことにより健全な水循環への影響が懸念される」として、「高速長尺先進ボーリングが県境から山梨県側へ約300メートル区間の地点に達するまでに、その懸念に対する対応について説明し、本県等との合意が必要である」とあらためてJR東海に求めたのだ。

どう考えても、「健全な水循環への影響の懸念」が何かわからない。県境付近の地下水を指して、「健全な水循環」があることなど理解できないからだ。

リニア環境影響評価準備書に対する知事意見書では、「山梨県における工事が本県を流れる富士川に及ぼす影響、長野県における工事が天竜川に及ぼす影響について示すこと」と記されている。

山梨県の工事は富士川への影響を言っているのであり、大井川水系や「静岡県の健全な水循環」とは全く無関係である。