社長が孤立するのは当然
最近だと2019年3月期の193億円の大赤字を思い出す人も多いかもしれません。RIZAPグループはM&Aを繰り返しながら成長してきました。グループ会社数は2019年3月時点で80社以上に増えていました。そうした買収した企業の経営再建に苦しみ赤字に転落してしまった。
ぼくが謝罪する様子がメディアで報じられ、SNSでも〈無能〉〈一発屋〉〈宝くじに当たっただけ〉と叩かれました。叩かれたのは、株主やメディアからだけではありません。社内での求心力も落ちて組織がバラバラになりかけました。
実際、赤字に転落したときに新卒社員たちと飲みに行ったとき、記者のように厳しい質問を浴びせられました。
「なんで赤字の会社を整理しないのですか?」
「責任をどうとるつもりなんですか?」
質問に対して、どんなに言葉を尽くしても、社員たちに言葉が届かなかった。社内なのに、アウェーの雰囲気がひしひしと伝わりました。
だからといって孤独に打ちひしがれていたわけではないんです。ぼくは、孤立無援の状況を当然の現象として受け止めていました。好調時は、トップは何をやっても称賛される。組織も明るく活気がある。しかしいったん失敗すると、トップの求心力が失われ、組織の歯車が逆回転する。それは仕方がないことなんです。
息子に誓ったひと言
193億円の大赤字の渦中で忘れられないことがあります。
赤字を発表した翌日、朝起きたら当時12歳だった子どもが、ワイドショーを見ていました。そこではぼくが謝罪する様子が流れていました。
普通ならチャンネルを変えるでしょうが、そうはしなかった。
子どもが学ぶべきは、厳しい状況に陥ったときにどうするかなのではないか。そう思って子どもにはぼくを批判する新聞を読ませました。そしてこう伝えたんです。
「お父さんは逃げないし、このあと必ず復活するから」
その一言で、ぼく自身も改めて覚悟が決まった気がします。
チャレンジが成功するとは限らない。いや、うまくいくほうが珍しい。昔からそんなふうに考えるクセがついていたせいか、失敗を何度経験しても、諦めるという選択はなかった。それは、うまくいかないことに慣れていたからです。
ぼくは子どもの頃から何をやっても怒られてばかり。褒められた経験がほとんどなかった。そのせいか、常に最悪を想定してしまうんです。
常に最悪を想定しているとはいえ、決して後ろ向きに考えているわけではありません。最悪を想定しているからこそ、多少うまくいかないことがあってもへこたれず、次のチャレンジができる。
未来は、誰にも予測はできないけど、自力でつくっていける。最悪の想定には、そんな前提があるんです。