読み終える頃には社会の見え方がガラリと変わる本

続いて、4位以下から、注目の書籍をご紹介します。第4位は、「読者が選ぶビジネス書グランプリ2024」で総合グランプリを受賞した『きみのお金は誰のため』でした。

田内学『きみのお金は誰のため』(東洋経済新報社)

本書の特徴は、物語形式でお金と社会について学べること。

中学2年生の主人公・優斗は個別進路面談で「(将来就くなら)年収の高い仕事がいい」と答えたことから、担任に「お金より大事なものがある」と説教をされてしまいます。

納得がいかないまま学校を出た優斗は、近所の謎めいた屋敷の前で七海という女性に呼び止められます。投資銀行で働く七海は、謎の大富豪「ボス」に話を聞きに来たとのこと。ふたりはともにボスの屋敷に招き入れられ、お金の講義を受けることになり――というストーリーです。

ビジネス書としてはもちろん、小説としても楽しめる本書は、中高生から大人まで幅広く支持されている一冊。読み終える頃には、お金に対するイメージと社会の見え方がガラリと一変するとともに、これからの生き方を考え直したくなっているはずです。

「キャリア不安」を抱くと若者は去っていく

第6位の『なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか』も話題を呼んだ一冊。前著『ゆるい職場』において、職場を「ゆるい」と感じる若手社員の離職傾向が強いことを指摘して読者を驚かせた古屋星斗さんの著書です。

古屋星斗『なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか』(日本経済新聞出版)

古屋さんによると、今時の若手は、「自分は別の会社や部署で通用しなくなるのではないか」という「キャリア不安」を抱くと、成長実感の得にくい「ゆるい職場」を去るという選択をすることがあります。つまり、若手の離職を防ぎたいなら、成長実感を持たせ、キャリア不安を取り除いてあげることが重要なのです。

具体的には、次の4つのアプローチを試してみましょう。

(1)囲い込まず、外の体験を与える
(2)短期で成長実感が得られる業務にアサインする
(3)褒めるだけでなく、フィードバックもしっかりする
(4)本人の合理性を超えた機会を提供する

「自分が若いときはこうだったから」「制度を考えるのは人事の仕事だから」と言い訳をしてばかりいると、あっという間に優秀な若手に去られてしまうかもしれません。若手社員と接する機会のある人に、ぜひ読んでほしい一冊です。