経済成長の牽引役はスマホからAIへ

6月5日の米国株式市場終了時点で、時価総額トップはマイクロソフトだった。同社はサム・アルトマン氏率いるオープンAIと関係を強化しAI分野の需要を取り込んでいる。2位はGPUなどの開発で業績が急拡大したエヌビディア、第3位はアップルだった。

エヌビディアのアップル超えは、AIがスマホに代わり世界経済を牽引し始めたことを明示している。2008年9月15日にリーマンショックが起きると、世界経済の成長率は急低下した。そのころアップルはiPhoneを投入し、アプリストアの運営も強化した。

アップルは、新しい産業を創出し経済の下支え役を果たした。米メタや中国バイトダンス傘下のティックトックなど、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)はその一つだ。世界的に“ギグワーカー”という新しい生き方も定着した。ところが、2017年頃からスマホ需要は飽和状態に近づいた。

データセンター向けGPUで98%のシェアを確保したか

現在、高い成長の期待はスマホからAI分野へ急激にシフトしている。AIには、いまだ無限ともいえる伸びしろがある。現在進行形でAI分野は拡大中だ。AIで自動車の自動運転技術開発は勢いづいた。効率的な発送電、新薬開発、港湾などのオペレーション、生産プロセスなどのシミュレーションにもAIの需要は急増している。

マイクロソフト創業者であり、世界のIT革命に重要な役割を果たしたビル・ゲイツ氏は、「AIは私たちが生きている間に目にすることになる、最も大きな変革だ」と評している。AIチップ(AIの学習強化や駆動に必要な半導体)の需要が増加している。

AIに対する需要拡大を支える、中心的存在がエヌビディアだ。2023年、データセンター向けのGPU市場で、エヌビディアは世界の98%のシェアを確保したとの推計もある。2024年、25年も同社の先端AIチップ供給は、需要に追いつかない状況のようだ。

当面、高い成長が続くとの期待から、同社の時価総額はアップルを上回った。エヌビディアのシェアを奪うため、半導体分野での設計開発、製造技術をめぐる競争も激化し始めた。