通常料金の2倍のペナルティを科す店も
こうした動きはレストラン業界以外にも広がる。米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、予約をキャンセルした場合の料金は、ホスピタリティ分野ではかつて、診療所やホテルでしか科せられなかった。しかしサロンやパーソナルトレーナーなどにも広がっていると指摘する。
同紙は、「ノーショー料金」を導入したカリフォルニア州ハンティントンビーチにある理髪店「ハーバー・バーバー」を紹介している。
この店は昔ながらの理髪店で、予約は紙と鉛筆で行われていた。しかし、無断キャンセルが利益を圧迫する事態になったため、クルーパ氏はデジタル化に踏み切った。新システムでは、顧客のキャンセル履歴を一括して確認することができ、無断キャンセルの防止手段に幅が生まれた。
クルーパ氏は、無断キャンセルに対して最大100ドル(約1万6000円)の罰金を科すことを決めた。これは通常のカット料金の2倍だ。もっとも、無断キャンセルをした場合でも、初回であればペナルティはない。2回目の無断キャンセルでは、次回来店時にキャンセル料金が加算される。3回目の無断キャンセルともなると、出入り禁止を言い渡すことがある。厳しい措置だが、個人運営の店がいかにキャンセルに悩まされているかを物語る。
「低評価の口コミ」を気にしている場合ではなくなった
店の評判が悪くなったり、客を失ったりするリスクをどう考えているのだろうか。店主のグレッグ・クルーパ氏は、米ウォール・ストリート・ジャーナル紙に対し、「我々は大手チェーン店ではないので、企業イメージを気にする必要はないのです」と述べている。
もちろん客の反発がないわけではない。クルーパ氏が遅刻した子供のカットを断ると、200万人のTikTokフォロワーを持つという母親が現れ、否定的なレビューを投稿すると脅してきたこともあった。クルーパ氏は動じない。ブラックリストの機能を新たに管理システムに追加し、まっとうな顧客だけを相手に商売を続ける考えだ。
店がノーショー料金を導入せざるを得ない背景には、無断キャンセルが経営に与える深刻な影響がある。
英決済サービス大手のバークレイズカード・ペイメンツが公表した200人のレストラン経営者を対象にした調査によると、イギリスのレストランでディナー予約がキャンセルされると、店側の損失が客一人あたり平均89ポンド(約1万8000円)に上るという。インフレ、エネルギー価格の高騰、人手不足とあいまって、無断キャンセルが店の経営を圧迫している実態を浮かび上がらせた。
予防措置として、レストラン経営者の34%が予約時に客にクレジットカード情報の入力を求め、ノーショーの場合にキャンセル料金を請求している。これに加え、37%の経営者がキャンセル料の導入を計画中だという。