「収入減を防ぐための経済的なセーフティネット」

英BBCは、ノーショーによる損失を避けるため、無断キャンセルの経験のある客からの予約を拒否する店の事例を紹介する。

レストランの屋外テーブルにろうそく
写真=iStock.com/Alena Kravchenko
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英ウェールズのモーファ・ネビンにあるパブ兼レストラン「ブリンシナン」の経営者ハイディ・ベイクウェル氏は、昨夏起きた複数回の無断キャンセルにより、合計約2万ポンド(約400万円)の損失を被った。同店ではそれ以降、ブラックリストに載った客の予約を拒否。ベイクウェル氏は依然として課題は残っているが、状況は少しずつ改善されているという。

顧客がキャンセルする理由はさまざまだが、なかには意図的に必要のない予約を入れる、悪質なケースもある。BBCは、複数のレストランを同時に予約し、その日の夜になってから手持ちの店舗の中から食事場所を決める「一括予約」の風潮があると指摘する。コロナ以降に増えており、小規模ビジネスにとって大きな負担となっているという。

苦戦を強いられる店側の自衛措置について、好意的な意見も目立つ。米CBSニュースはボストン大学のアポストロス・アンプンタラス助教授は、キャンセル料が「客から多くの金を巻き上げる」ための施策ではないと指摘する。「収入減を防ぐための経済的なセーフティネット」であるほか、理想的には「ノーショーの数を減らすためのものである」という。

サービス業界で進む「前払いのチケット」化

ノーショー料金は飲食業界以外ではすでに当たり前となっている。飛行機のチケットやコンサート代金、大型レジャー施設などでは客が前払いでチケットを購入し、自己都合のキャンセルに対して返金は応じないのが一般的だ。

飲食業界もこれに倣い、アメリカの一部レストランでは、予約時に前金を預かる試みが広がっている。

CBSニュースによると、米ニューヨーク市マンハッタンのレストラン「トリッシ」では、予約時に一人当たり50ドル(約7800円)のデポジット(預かり金・保証金)を請求している。客は、予約通りに来店すれば会計金額からデポジット分が引かれる。来店しない場合はデポジットは返金されない。この店では予約を12時間前までにキャンセルしても返金を受けることができるという。他のレストランでも25ドル(約3900円)ほどのデポジットを請求する店舗が出てきている。

コロンビアビジネススクールのスティーブン・ザゴー教授は、CBSニュースに対し、こうしたレストランの予約料金が「前払いのチケット」に似ていると指摘する。来店を動機づけ、責任を持って予約した店に足を運ぶよう促す枠組みだ。