デジタル化の恩恵
決済手段のデジタル化によって理・美容業界でもノーショー料金の導入が進んでいる。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙が米決済プラットフォーム「スクエア」のデータを報じたところによると、キャンセル料を請求する割合は、2021年の5%から2023年には16%にまで増加している。まだ少数派であるが、2年間で3倍以上に伸びている点は注目に値する。
スクエアがキャンセル料のシステムを導入したことで、事前にカード情報を収集する理髪店の割合は43%増加した。同社は、キャンセル料を科した店舗では、キャンセル数が平均45%減少し、とくに無断キャンセルは82%減少したとしている。
医療機関もノーショー料金の導入を進めている。カーネギーメロン大学のジョージ・ローウェンスタイン教授は、CNBCに対し、「予約を無断でキャンセルする患者は、他の患者が利用できる予約枠を占有しているのです」と指摘し、キャンセル料の導入が医療機関の効率を向上させる手段になると好意的な評価だ。
子供の病気でもキャンセル料を請求された
前払い化・ノーショー料金の導入が広がる中、一部の客は新しいコンセプトに抵抗を示している。やむを得ない事情で来店できなくなった際など、高額なキャンセル料を科されることへの不満がある。
ニューヨーク・タイムズ紙は、ニューヨークに住む男性の声を紹介している。妻の誕生日を祝うために予約したミシュラン星付きレストランを、息子の急病によりキャンセルせざるを得なかった。だが、24時間前までのキャンセル期限をわずか30分過ぎていたことで、200ドル(約3万1000円)がカードに請求された。アザラ氏は同紙に対し、レストランの経済事情には理解を示しつつも、「本当に痛かった」と悔やむ。
サンフランシスコに住む女性は昨年秋、オンライン予約のキャンセルが正常に完了しておらず、キャンセル料50ドル(約7800円)を請求された。交渉の末、店から同額相当のギフトカードを受け取って、後日店に足を運んで使用した。ギフトカードがなければ「二度とあの店に足を運ぶことはなかったでしょう」と彼女は言う。店からすれば、低評価のレビューを付けられるおそれもあり、キャンセル料の導入がノーリスクとは言い切れない。
一方、食材の廃棄は死活問題だ。ホスピタリティ業界の専門家リリー・ジャン氏は、ニューヨーク・タイムズ紙に、「レストランは人々を罰したくないという気持ちを持っています」と述べる。予約キャンセルの問題がビジネスに与える影響がいかに大きいか、消費者に理解してもらうことが重要だと強調する。