本来の「利益」は他を益すること

経営者は常に、いかにして会社の利益(りえき)を最大化するかを考えている。経営者でなくとも、人々の関心も常に「自分の利益」にある。

この「利益」も、実は仏教の言葉だ。ただし仏教では「りえき」ではなく、「りやく」と読む。そう、ご利益(ごりやく)と呼ばれるものだ。

多くの人は、受験合格、無病息災、家内安全、商売繁盛など、祈り、祈ってもらうことによって得られるだろう恵みのことを、ご利益(ごりやく)と呼んでいる。

しかし仏教が説く本来の利益(りやく)とは、自分の望みが叶えられることや、金品が得られることではなく、仏の教えによって得られた精神的恩恵を意味している。さらに、仏の教えを受けて自分が利益を得るということだけでなく、他を益(えき)するということ、他に恵みを与えるという精神と実践が大切なのである。

経営の裏には必ず生身の人間がいる

さて、これまで元々は仏教語であった5つの用語を紹介してきたが、あなたはいくつ、その本来の意味を知っていただろうか。

会社とは社会に価値を創造、提供する装置であり、仕組みである。

会社におけるお金は、人体における血液と同じだ。循環が滞れば病気になるし、枯渇すれば生き延びることができなくなる。けれども、会社はどこまでいっても、人が人に商品やサービスを提供し、その対価としてのお金を受け取って血液としている。経営の裏には必ず生身の人間がいるのである。

「お金」ではなく「人」を見る。

ビジネスの場面で使われている仏教の言葉は、そのことを私たちに思い出させてくれる。私たちが普段、何気なく使っている仏教の言葉は、個人の「生き方」のみならず、会社の「経営」や、社会の「経済」にも深遠なる智慧と、大いなる指針を与えてくれるのである。

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