「投機」は禅問答を意味する言葉
「投機」といえば、短期的な価格変動での売却益を狙って行う投資のこと。損失を見込み危険を顧みず大利益を得ようとする行為ともいえる。
ギャンブルではないにしても、そのような行為を意味する言葉が、仏教の言葉だと聞いて、意外に思う人もあるはずだ。
しかし「投機」もまた仏教の言葉である。「投」は文字通り投げるという意味であり「機」は心の働きを指す。師匠が弟子に問いを投げ、弟子がその問いに答える。また弟子が質問を投げかけ、師匠がその質問に答えたり、答えずに考えさせたりする。そのような無限の掛け合いを通して、師匠は弟子を導き、弟子は次第に悟りの高みに達してゆく。
その禅問答を意味する言葉が相場に使われるようになったのだ。市場は、株や通貨などをその価格で買いたい、売りたいという、さまざまな思惑を持った売り手と買い手が集まって問答を繰り返し、価格が決定されてゆくからである。
ブッダは教えが「流通」することを望んだ
流通とは、消費者から生産者までの商品やサービスの流れのことを指す。
しかし、これも仏教の言葉だ。「流通」は元々「るつう」または「るづう」と読み、仏の正しい教えが広く伝わっていくことを意味する。
『金光明最勝王経』の第三巻には「安穏豊楽 正法流通」という表現が登場する。「正い仏法が広く伝わることによって、安穏豊楽な社会が実現する」という意味だ。
また、聖徳太子が著した『勝鬘経義疏』には、「如来、まさにこの経を流通せんと欲す」とある。「ブッダは、この経典が広く伝わることを望んだ」という意味である。