こうしたワザを駆使して日中の仕事を効率よく済ませれば、アフター7を新たな情報収集や人脈形成にあてる余裕も生まれようというものだ。
パナソニックの横山さんは、夕方以降の時間帯を使い、美術館や演劇鑑賞、映画館などに出かけていくことが多い。
「新人の頃に上司から『時間があるなら会社でじっとしてないで、外で映画を見るなり何なりしてこい』と言われたのが、いまだに身についているのでしょうね。インプットを増やすためであるのはもちろんですが、商品広告の企画を練るにしても、人々が何を面白いと思い、何に感動するかを肌感覚でわかっていなくては共感の持てる表現は生み出せません。だから、映画もDVDで見るより映画館に足を運んで、みんながどこに反応しているか、何に共感しているかを読み取ることが大事なんです」
アフター7で積極的に外へ出ていくという点では、JTBの久保田さんも同じ。ただし、異業種交流が主な目的だ。
「夜は常に2~3週先まで埋まっています。社内よりも社外、それも異業種の人と会うことが圧倒的に多いですね。私の仕事は、物販やイベントなど旅行以外の商品で新規事業を創出することなので、異業種の人に学ぶことは多い。それにこういう景気だと、社内の人と話すだけでは悲観的な方向に話が向かいがち。ところが社外の人と話すと、『JTBは一般の人にこんなふうに見られているのか』と、それまで気づかなかった強みや特徴が客観的に見えてくる。参考になるだけでなく、ポジティブな気持ちになれるという効用は大きいと思います」
いたずらに残業するのは得策ではない。アフター7で得られるものの大きさを改めて見直してみるのもいいだろう。
中村浩美
三井物産 エネルギー第二本部環境事業部 排出権プロジェクト室 マネージャー
1993年、上智大学卒業後、神戸製鋼所入社。その後アジア経済研究所・開発スクールを経て04年オックスフォード大学大学院修士課程入学。修了後、世界銀行を経て、07年、三井物産入社(嘱託)、09年より現職(正社員)。
伴 晃一
森ビル 営業本部 オフィス事業部 オフィス営業2部 プロジェクト 営業グループ
1981年、埼玉県生まれ。2003年早稲田大学商学部卒業後、森ビル入社。プロパティマネージメント部を経て、06年より現職。「火曜夜と金曜昼に会社で英会話のレッスンがあり、その時間は使えないものとして逆算して行動します」。
横山 悟
パナソニック コミュニケーショングループ クリエイティブチーム 参事
1968年、大阪府生まれ。90年、金沢美術工芸大学商業デザイン学部卒業後、パナソニック入社。入社以来一貫して宣伝制作業務を担当。メーンの担当は、ナノイーのトータル表現戦略。
久保田達之助
JTB法人東京 事業開発部 事業開発部長
1989年、明治大学政治経済学部卒業後、JTB入社。虎ノ門支店、コミュニケーション事業部を経て、2010年から現職。化粧品メーカーと共同開発した、旅行用の殺菌ジェル「いつでもどこでもハンドジェル」などがヒット。