入社前の英語試験で、まさかの落第点

三井物産では入社前に英語の試験があるんですが、私はしっかり落第しまして(笑)。1から9にランク分けされて、5以上じゃないと海外に行かせてもらえなかったのですが、私は下から3番目の7でした。受験英語で読み書きに関してはそれなりに自信があったものの、要するに耳が慣れていなかった。私らの時代は海外旅行もそんなに行きませんでしたし、外国との接点はほとんどありません。

三井物産社長 安永竜夫氏

入社してからは毎日英語のテープを聴いたり、英語学校にも通って外国人と話したりと一生懸命やりました。なんとか1年目で6、2年目で5になって、3年目に「もう海外に出られるぞ! どこでもいいから出してくれ!」と言ったら「まずは中国に行け」と。

普通は「修業生」という制度があって、1年半みっちりその国の言語を勉強することができるわけですが、私の場合は特殊で、3カ月しか与えられなかった。当時の上司に訳を訊いたら「別におまえを中国語のエキスパートにしたいわけじゃない。中国大陸へ行っても英語をしゃべれる人はいないから、動く、食べる、寝る、要するにお客さんのところへ行くまで自力でなんとかできるように勉強してこい」と。

しょうがないから朝から晩まで必死に中国語を覚え、3カ月たったころには広州から北京まで1週間卒業旅行をして、死なないで帰ってくることができました。

東京に戻ってからもよく出張で北京に行きましたが、どこに行ったって英語はほとんど通じないんですよね。

その後、今度はインドネシア担当になりましたが、彼らの英語は中国人よりは上手なものの、我々と似たようなものでした。

発音やグラマーより「何を伝えるか」

私の英語は、当時は日本人よりも英語が苦手な人が多かったアジア人との会話が基礎となっています。徹底して実践してきたのは、ビジネスとして相手に何を伝えたいのかをストレートに伝えることと、イエスかノーかをはっきりさせること。