酷評の嵐「できることすべてが苦手」

著名YouTuberたちは、さらに容赦ない。

英BBCが「世界で最も有名なテック・レビュアーの一人」と認めるマルケス・ブラウンリー氏(登録者1890万人)は、自身のYouTubeチャンネルで、「できることのほとんどすべてが苦手だ。基本的に(使っている間は)ずっと」と酷評している。

ルックスについては「超未来的なウェアラブル・コンピューター」と絶賛したものの、「残念ながら現在のところ、これまでレビューしたなかで新たなワースト製品でもある」と厳しい評価を下した。

写真=Humane press kit
Ai Pinの筐体。シンプルなデザインだ。
写真=Humane press kit
横から見たAi Pin

不満の第1は、応答速度の遅さだという。

「ワシントン記念塔の設計者は?」と問いかけると、4秒ほど経ってから「設計者を調べています……」と中継ぎの回答。発話を終えて7秒ほど経ってやっと、「19世紀のサウスカロライナ州出身の傑出したアメリカ人建築家、ロバート・ミルズによって設計されました。建設は段階的に完了し……」と冗長な説明が続く。ただ待ち続ける7秒の時間は、不安になるほどに長く感じる。

第2に、聞き取りが正確ではなく、待たされた挙げ句に見当外れの回答が返ることがある。

ブラウンリー氏が「このあたりで良いアジアン・レストランは?」と聞くと、何度尋ねても「アジアン」を「アッシュ(灰)」と解釈。「いらっしゃる場所で回答できる情報はありません」と、すれ違った回答ばかりを返す。

「ここからエンパイア・ステート・ビルまでの交通状況は?」と問うと、しばし待たされた末にAi Pinは、ボイス・コマンド機能を使って質問するよう促す。今まさに、ボイス・コマンド機能で質問しているにもかかわらず。待たされた上に何も情報が得られない、もどかしさだけが募る。

翻訳は比較的機能しているが…

一方、翻訳機能はかなりうまく動作するようだ。ウォール・ストリート・ジャーナル紙の名物記者であるジョアンナ・スターン氏は、Ai Pinを装着してマンハッタンの中華料理店を訪問。「トイレはどこですか?」と尋ねると、質問がうまく中国語に変換されたようだ。

店員が中国語で回答したのを受け、Ai Pinが「ああ、トイレですね。2階にあります。この横のエレベーターに乗って、あとはまっすぐ行って左に曲がってください」と英訳し、入り組んだコミュニケーションを成立させた。

しかし、さらにレストランの食卓に着いてから試すと、様子がおかしい。中国語への翻訳を何度頼んでもスペイン語に訳してしまい、スターン記者も店員も困惑。サムソンのスマホ「ギャラクシー S24」の方がずっと安定して信頼できるとの結論に至った。

このように不安定な挙動が、ユーザーのあいだで第3の不満点になっているようだ。