エンガジェットも、現状では「AIアシスタントとしてほとんど機能しない」と指摘する。
宅配フードの注文など限られたタスクをこなすことができるが、「スマホでやったほうが早くて簡単だ」という。「携帯電話が同様のAIタスクを処理できるようになった今、R1(原文ママ)はその存在を正当化するのに十分ではない」との指摘だ。
バッテリーは8時間で底をつき、Uberは30秒丸々待たされたうえに注文できず、画面上の「笑ってしまうほど小さな」キーボードは苦痛で、2Wの貧弱なスピーカーで音楽を奏でる意味もわからないと記事は指摘する。
iPhoneと真逆のスタートを切ったAi Pin
Ai Pinやr1に限らず、いつの世も新しいガジェットは、多少なりとも未完成の状態で登場してきた。それでもたいていの製品は、磨き上げれば光ると感じさせる新規性があった。
Appleの初代iPhoneは数個の純正アプリしか使えなかったが、世間の支持を得た。
iRobotの初期型Roombaは原始的で、何度も壁に当たってはほぼランダムな経路で走行するだけだった。それでも人々を掃除から解放し、ロボット掃除機のスタンダードの地位を築いた。
米スタートアップが生んだFitbitは、わずか数桁を表示するディスプレイしか備えないが、健康管理トラッカーのスタンダートになっている。
こうした完成度の高い製品は、少なくとも発売当初の初期型において、「限られた機能しか搭載しないが、シンプルゆえに万人が使える」という共通点がある。
ところがAi Pinやr1は、その正反対の道を歩んだ。「AI搭載で何でもできそうだが、実際にはほとんど何もこなせない」製品に陥ってしまった。これが失敗の理由の1つと言えよう。
スマホに代わるデバイスになり得るのか
さらには、ポケットサイズで何でもこなすスマホがすでに普及している今、アンチ・スマホの立場を打ち出したことも、度を超えて野心的であったかもしれない。
未完成ゆえに愛される製品はあるが、Ai Pinやr1は目下、高価なだけの試作品レベルに留まっている。AIブームへの便乗商品に終わるか、それとも、真に人々とスマホとの接し方を変える歴史上の分岐点となるか。
巻き返しの道は相当に険しいが、幸いにもAI製品はアップデートによる進化の余地がある。今後の改善が期待される。