新たな収益源は「広告」事業

チョコザップでは、新たな収益源として、広告プラットフォーム事業をあげている。

そのカギを握るのが「リテールメディア」だ。リテールメディアは、小売(リテール)企業が保有する顧客データを活用して、自社のスマホアプリや店舗のデジタルサイネージなどに広告を配信する仕組みだ。英広告会社WPP傘下のグループエムのリポートでは、2028年にテレビ広告市場をリテールメディアが超えると予測されている。

日本企業では店舗内のサイネージに広告が表示されるレベルの取り組みがほとんどだが、チョコザップはリテールメディアを成功させるために必要な条件がほぼそろっている。すでに120万人を超える膨大なスケールの会員がいて、顧客接点はリアルとデジタルの両方で押さえている点は大きい。

パーソナライズ化した広告が、サイネージやサンプリングアプリ、アプリバーナー、メルマガ、レポート、バイタルデータなど多様なメディアを通して届けられる。特にサンプリングは、店舗内にスペースを設ければ、高い効果が得られそうだ。チョコザップは、広告主にとって魅力的な媒体だといえる。

chocoZAPの広告事業(2024年3月期 第3四半期決算説明会資料より)

社会課題の解決とビジネスを融合させる

今後の成長戦略には「社会課題への貢献」も含まれている。テーマのひとつは、社会とのつながりを失った高齢者が心身の健康を損なう“フレイルドミノ”の解決だ。

現代社会では社会とのつながりを失った高齢者、特に定年退職後の男性が家をあまり出なくなり、健康を損なうケースは多い。医療費、介護費の増加は、地方自治体が抱える問題でもある。

そのためチョコザップは、高齢者を家の外に連れ出し、運動習慣をつけてもらう「官民連携コンビニジム」を提案している。地方には空き店舗、公民館・図書館、廃校舎など10万を超える施設の候補があり、全国300店舗の出店を目標としている。

物流業界の「2024年問題」に対応した施策もある。今年4月に施行された働き方改革関連法によって、トラックドライバーなどの時間外労働時間が制限され、人手不足が深刻化している。

ドライバーの健康課題に対応するため、高速道路のパーキングエリア(PA)や道の駅に出店を進めている。第1号はこの5月に、静岡県の東名高速道路日本平PA(上り)に出店したばかりだ。

ドライバーにとって重要な休息基地に、コンビニジムのサービスがあれば、利用者はかなりいるはずだ。他のサービスと合わせたシナジー効果も期待できる。

チョコザップの社会貢献は、おざなりの“お題目”ではなく、社会課題の解決と自社のビジネスをうまく融合している点で訴求力がある。高い貢献度を実現できるかどうかが成長の試金石となるだろう。

(構成=伊田欣司)
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