不動産バブルで「マイホームがないと結婚できない」状況に

さらに出生率の低下に拍車をかけたのが、不動産価格の高騰、すなわち、不動産バブルである。中国の若者は結婚の条件としてマイホームの購入を挙げる。まるでマイホームすら購入できない人は結婚する資格などないといわんばかりである。むろん、今の20代や30代には、マイホームを買うほどの経済力はほとんどない。中国では、一般的にマイホームを購入する際に住宅ローンを借りるが、頭金は購入代金の30%となっている。

2023年8月に20%に引き下げられたが、それでも多くの人は頭金を用意することができず、親の支援を受けて頭金を払う。親は我が子が結婚できないのを見て見ぬふりをすることができなくて、老後の資金の一部ないし全部を我が子に渡す。代わりに、自分の老後は我が子に面倒をみてもらおうと夢を見る。

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しかし、我が子を支援する経済力のある親はまだいいほうだが、経済力のない親も少なくない。その子供はマイホームを買うことができないので、結婚を断念せざるを得ない。こうして結婚したくても結婚できない若者が増えていき、出生率はさらに低下してしまっているとみられている。

中国経済の高成長は長らく、若くて教育された豊富な労働力、すなわち人口ボーナスによって支えられてきた。ところが2013年3月の習近平政権誕生以降、その人口ボーナスがオーナスとなっている。李克強りこっきょう前首相は都市化ボーナスに期待を寄せていたが、都市化が中国経済を牽引する力は思ったよりも強くなかった。

大都市の不動産価格は下がったが、若者はそれでも買えない

現実問題として、出生率が低下し、人口動態の少子高齢化が急速に進んでいることから、中国経済はこれから需要不足に直面することになる。不動産需要もなかなか上向きにならない可能性が高い。中国国内の専門家のコンセンサスでは、約2000万戸が供給過剰になっているとされる。この数字は現実味のあるものと思われる。

出生率が低下するなかで、当面は在庫の物件を値下げして売るしかなく、新規の開発プロジェクトへの着手は難しいと思われる。北京や上海などの大都市を中心に、中古物件を含めて不動産の価格はすでに3割下落したといわれている。若者の失業率は高止まりしており、また失業していなくても、賃下げが実施されているため、不動産の買い控えが目立つ。中国の不動産市場は需要不足が長期化する可能性があり、サプライサイドの調整も必要であると考えられている。

このような状況下で、中国の若者たちは大きな絶望に直面している。