国内の不満が外に向けられるリスク

【エミン】しかし、こうした中国の変化を、われわれは歓迎できません。中国がとてつもなく危険な時代に突入したわけですから。これからの中国は際立ってアグレッシブに動く可能性を秘めているのだと、私は捉えています。

【大橋】アグレッシブというのは、中国国民の対内的な不満が抑制できなかった場合、それが外に向くというリスクでしょうか。

【エミン】そういうことです。

【大橋】だから、台湾有事の可能性だって高まってきますよね。若者の失業が50%は恐ろしいです。仕事を持たずに不満を抱えて生きている若者が、中国全土にあふれ返っているわけですから。

写真=iStock.com/e-crow
台湾有事の可能性が高まっている(※写真はイメージです)

【エミン】どこかで彼らの怒りをかわさないと、国内で反乱を起こす危険性を絶えずはらんでいる状況が続くのです。

利下げしても効果は限定的

【大橋】ここで再び、中国の不動産問題に返ります。デベロッパーや地方政府のノンバンクが生んだ1000兆円単位の焦げつきについて、エミンさんにお聞きしたいことがあります。

これは中国政府がしゃかりきに人民元を刷って、それを充当するやり方で回復できるものなんですか?

【エミン】とりあえず、中国人民銀行は利下げをして、流動性供給を行ってはいます。ただ、バランスシート不況というのは、国から流動性供給をしても、つまりいくら金融緩和をしても、みんな借りようとしないわけです。かつての日本がそうだったように。

先に指摘したとおり、デレバレッジしようとしていますからね。

そんなバランスシート不況の最中、国から流動性供給を強化したところで、焼け石に水とは言わないまでも、効果はきわめて限定的です。

それを乗り越える方法とは、本来ならば、いかに若者の失業率を下げるかといった観点から、国家プロジェクトを敷かなければならない。例えば、大掛かりなインフラプロジェクトを打つとか……。