こだま2→4本でメリットと言えるのか
岸田首相肝煎りの「静岡県のメリット」はどうか?
現在、毎日200本以上ののぞみが静岡県内を通過する。静岡県内には6駅も新幹線停車駅があるが、のぞみはどこにも停車しない。
コロナ禍前の2019年には、1日平均でのぞみ230本、ひかり65本、こだま83本が運行されていた。2022年には、のぞみ207本、ひかり65本、こだま83本が運行された。
ひかりは静岡、浜松の両駅で1時間に1本、往復15本程度しか停車しない。ひかりの本数を増やすためには、のぞみの本数をさらに減らさなければならない。
となると、国交省案はこだまの本数が1.5倍増えることであり、こだまが83本から125本となることだ。ふつうに計算すれば、現在、1時間に2本のこだまが、4本となる。これが、「静岡県のメリット」と言えるのかどうか。
川勝知事が、静岡空港新駅を要求したのも理解できる。
しかし、なぜ、JR東海はそれほどまでに静岡空港新駅設置を拒むのだろうか?
もともとJR東海は、東海道新幹線の静岡空港新駅設置の反対理由に、静岡―掛川駅間が近すぎることを挙げていた。
こだまで14分の静岡―掛川駅間に中間の静岡空港新駅となれば、減速は避けられず、新幹線の意味は失われてしまう。それでは、静岡空港新駅を提案してもJR東海が聞く耳を持たないことも理解できる。
もし、静岡空港新駅を本当につくるのであれば、こだまは停車しないで、のぞみのみが停車する駅を想定しなければならない。東京、京都、大阪へ行き来するためだけの新駅となる。静岡県内はどこにも停車しない。つまり、右肩上がりに増え続けるインバウンド(訪日外国人客)に対応するためだけの新駅となる。
新知事が「静岡県のメリット」をどう引き出すか見もの
現在の静岡空港は、東南アジアの旅行客に対応する2500メートルの滑走路を持つが、国際線はいまのところ、中国、韓国、台湾のみである。
約10年先の品川―名古屋間の開業時に、インバウンド需要が伸びていれば、日本国内にはこれまでなかった空港と結びつく新幹線駅が必要となるかもしれない。そのとき、静岡空港新駅設置の可能性が真剣に議論される。
さて、新知事はどのように考えているのか?
大村氏は「静岡県のメリットを引き出す」として、具体的には在来線や大井川鉄道の利活用を挙げたようだが、それではちょっとよくわからない。
一方、鈴木氏は「ひかりの本数を現在の1時間1本から3本にする」と具体的な数字を示した上で、静岡空港新駅の設置をJR東海に交渉することも挙げた。
どちらかが知事になっても、「静岡県のメリット」を引き出すのは容易ではない。ただ、それを必ず実現することを約束しなければならない。