「多弱野党」という最悪の結末

そんな中で起きたのが「希望の党騒動」だ。安倍晋三首相(当時)が衆院を解散するタイミングに乗じて、小池知事が新党「希望の党」を結党。前原氏率いる民進党は、抜き打ち的に同党への合流方針をぶち上げた。

自民党の小泉政権で閣僚を務めるなど「改革保守」の系譜に位置し、東京で絶大な人気を誇った小池氏と、全国に組織を持つ民進党が合体し、さらに大阪で力を持っていた日本維新の会と選挙協力する。その上で、共産党と融和的な民進党のリベラル勢力を「排除」し、一夜にして「非自民・非共産の改革保守勢力」の塊を作り上げる。こんな構想だった。

だが、小池氏の「排除」発言への反発が高まり、希望の党は急激に失速。小池氏に「排除」された側のリベラル系議員が急きょ結党した立憲民主党が、衆院選で希望の党を上回り野党第1党になった。

希望の党騒動は「改革保守勢力の結集」どころか、民進党を大きく分裂させ「多弱野党」を作り出し、おまけにリベラル系政党を野党の中核に押し上げるという、小池氏らの狙いとは真逆の結果を招いた。

立憲が徐々に「野党の中核」に

騒動が失敗に終わると、小池氏は代表を早々に玉木氏に任せ、希望の党から手を引いた。翌2018年、希望の党を離れた玉木氏ら旧民主党系議員が国民民主党を結成。枝野氏率いる立憲民主党と、野党第1党の座をめぐり小競り合いを繰り返した。

小池氏から離れた国民民主党は必ずしも「改革保守」政党ではなかったが、「非自民・非共産の大きな塊」へのこだわりは強く、共産党との連携も模索する立憲との埋めがたい溝となっていた。

だが、立憲は野党第1党のスケールメリットもあり、2019年参院選で議席を倍増させて国民民主党との差をつけた。翌2020年には国民民主党の議員の多くが事実上立憲に「合流」し、立憲は徐々に「野党の中核」の立場を固めていった。

玉木氏は「合流」を拒み、国民民主党を小政党として存続させたが、所属議員の志向はさらに分裂した。与党にすり寄り始めた玉木氏に対し、「希望の党騒動」の中心人物だった前原氏は、なおも「非自民・非共産の改革保守結集」を目指し、同党を離党して新党「教育無償化を実現する会」を結党。維新との統一会派を組んだ。