4月28日に投開票が行われた衆院3補選では、いずれも立憲民主党の公認候補が勝利を収めた。ジャーナリストの尾中香尚里さんは「立憲が3勝した意味合いは大きい。次期衆院選の構図は『自民1強vs多弱野党』から『自民vs立憲の2大政党による政権選択選挙』になるだろう」という――。
衆院東京15区補欠選挙。街頭演説する立候補者・乙武洋匡氏(左)の応援に駆けつけた東京都の小池百合子知事=21日、東京都江東区
写真=時事通信フォト
衆院東京15区補欠選挙。街頭演説する立候補者・乙武洋匡氏(左)の応援に駆けつけた東京都の小池百合子知事=21日、東京都江東区

「最強の保守王国」の牙城が崩れた

4月28日に投開票が行われた衆院の3補欠選挙(東京15区、島根1区、長崎3区)は、立憲民主党の公認候補が全選挙区で勝利した。自民党は東京と長崎で公認候補を擁立できない「不戦敗」となり、16日の告示の段階で負け越しが決まっていたが、同党が小選挙区で一度も議席を奪われたことのない「最強の保守王国」島根でも惨敗したことで、「立憲大勝、自民大敗」の印象はさらに強まった。

二つの選挙で「自民vs立憲」の直接対決がなかったことを挙げ「3勝もへちまもない」と冷笑する向きもあるが、自民党にとって「戦わずに負ける」ことは、「戦って全敗」以上に恥ずべきことだ。この期に及んで立憲の勝利を過小評価するのは、政治の見方がゆがんでいるとしか思えない。

3補選のそれぞれの「意義づけ」

三つの選挙にはそれぞれ異なった意義づけができる。

島根1区は今回の補選で唯一の「自民vs立憲」の一騎打ちであり、次期衆院選の前哨戦の意味合いがあった。この選挙一つで次期衆院選全体を占うことはできないが、「最強の保守王国」での立憲の勝利は、次期衆院選の構図が「自民1強vs多弱野党」から「自民vs立憲の2大政党による政権選択選挙」に移ったことを明確にした。

長崎3区は「立憲vs維新」の一騎打ちを立憲が制した。これは、2021年秋の前回衆院選以降、長くくすぶっていた両党の「野党第1党争い」を、事実上終わらせた。少なくとも次期衆院選において、自民党との「政権選択選挙」に臨む「2大政党の一翼」となるのは、立憲であることがはっきりした。

立憲は島根の選挙を戦うことで、自民党との「政権選択選挙」に臨むことを明確に意識していた。一方、維新は「第2自民党」をうたうほど自民党との親和性が高く、さらに今回の補選で自民党との直接対決がなかったこともあり、最後まで「立憲との野党第1党戦い」の感覚から抜けきれなかった。維新は、政治のフェーズの変化に乗り遅れ、野党第1党争いから脱落した。