自民にすり寄る小池氏の敗北
東京15区補選に戻ろう。
小池氏はこの選挙で、自らが特別顧問を務める地域政党「都民ファーストの会」が国政進出を目指して設立した「ファーストの会」が作家の乙武洋匡氏を擁立する、と発表した。乙武氏推薦に動いたのが、玉木氏率いる国民民主党だった。
小池氏と玉木氏。「希望の党騒動」後に同党の共同代表を務め、たもとを分かった2人が再びタッグを組んだ。だが、当時と違うのは、希望の党が「政権交代」を目指したのに対し、現在の2人はともに自民党に色目を使っていることだ。
玉木氏は言うに及ばず、小池氏も最近の都内の地方選挙を「自民+公明+都民ファースト」の枠組みで戦って勝利し、裏金問題に苦しむ自民党に恩を売ってきた。乙武氏についても、小池氏は当初、両党に支援を求める腹づもりだった(この経緯については4月15日公開「『与党でも野党でもない候補』は結局、自民党になびく…乙武洋匡氏の『無所属出馬』にみる拭いがたい違和感」をお読みいただきたい)。
一方、この選挙区ではすでに、維新の金沢結衣氏が出馬を表明していた。前原氏率いる「教育無償化を実現する会」は金沢氏を推薦。ここに着目すれば「希望の党騒動」の中心人物だった小池氏と前原氏が敵対することになった、と言える。
今もなお「野党を結集して自民党から政権を奪う」構えを崩さない前原氏にとって、自民党に近づく小池氏の姿はどう見えたのだろうか。
「改革保守」政治からの脱却
「希望の党」で改革保守を結集しようとした勢力が、分裂して戦った東京15区補選。両陣営とも、かつて自らが「排除」しようとした勢力から誕生した立憲の酒井菜摘氏に及ばなかった。金沢氏は3位、乙武氏は5位に沈んだ。
選挙戦最終日の27日、酒井氏の最終演説に駆けつけたのが、立憲の創設者である枝野氏だった。「民間に委ねればうまくいく、というのは『昭和の政治』だ。『自己責任だ、小さな政府だ』なんて、いつの時代の話だ」と訴える枝野氏の演説は、明確に「改革保守」の政治を切り捨てていた。