「自分が社長だったら」という視点で考える

あなたも「この会社は終わっている」「なんであいつが昇進するんだ」「社長はいったい何を考えているんだろう」などと、会社の姿勢や方針に対する批判を口にしたことがあるのではないでしょうか。そんな人にはぜひ、次のようなことを考えてみてほしいと思います。

・自分が社長なら、「終わっている」会社をどのように変えるか?
・自分が社長なら、どんな人を昇進させたか?
・自分が社長なら、「いったい何を考えているんだろう」と言ったその意思決定や発言について、どのように行動するか?

つまり、「自分が社長だったら」という視点で、あらゆる物事を考えてみてほしいのです。視座を上げてみると、まったく別のものが見えてくるのではないでしょうか。

私は専務時代、「No.2理論」という名のもとに、仕事を好き勝手に楽しんでいたものです。社長にさえならなければ、会社員は楽しいですし、苦しみは限定的なものにとどまります。極端に考えると、営業役員は売り上げ目標を達成できれば万々歳。売り上げ目標を達成することだけがミッションで、厄介なトラブルが起こったとしても、最終的には社長が責任を負ってくれます。

社長になって、土下座も生まれて初めて経験した

私の身を振り返ると、専務時代は接待費の使い方もルーズだったと思います。社用車を使わせてもらえることも「当然だ」と思っていましたし、そこにかかる経費に関してはほとんど意識していませんでした。

しかしジョブズに出会い、アップル・ジャパンの社長という大役を任されるようになって、考え方は180度変わりました。製品の不良などにより、土下座も生まれて初めて経験しました。毎週のグローバル営業会議では、科学者のように数式を用いて販売予測をする必要がありました。もちろん、経営や人事に関する全責任は私にあります。

写真=時事通信フォト
アイチューンズの日本でのサービス開始を発表するアップルコンピュータのスティーブ・ジョブズ最高経営責任者(CEO)=2005年8月4日、東京・千代田区
山元賢治『世界の先人たちに学ぶ 次世代リーダー脳』(日刊現代)

こうした経験から、社員が「毎月給与が自動的に口座に振り込まれて当然」と考え、のほほんと働いている裏で走りまわっているのは社長なのだ、ということがわかりました。

社長の意思決定や言動に不満を覚えることがあっても、社長の立場で考えてみると、その意思決定や言動の理由が理解できるはずです。きちんと理解できたら、社長を真剣にサポートできる人になってください。

そして普段、愚痴をこぼし、被害者意識が染みついている部下にも、トップの目線で物事を考えることの大切さを教えてあげましょう。社員がみんなこの意識で行動できるようになると、会社は大きく変わっていきます。

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